成王 (楚)

春秋時代の楚王・成王：生涯と業績

楚の成王は、春秋時代を代表する楚の君主です。羋（み）氏、熊氏、諱は惲（うん）または頵（けい）と伝えられています。本記事では、成王の生涯、特に即位から最期に至るまでの出来事、そしてその人物像について、史実を基に詳細に解説します。

即位と楚の隆盛

成王は文王と息嬀の子として生まれました。兄の堵敖（とあう）が楚王であった時期、政争に巻き込まれ、随（ずい）に亡命を余儀なくされます。しかし、随の人々の協力を得て堵敖を討ち、楚王の座を奪取。これが成王の即位でした。

即位後、成王は徳政を敷き、周辺諸侯との外交に力を注ぎました。周王室への朝貢を通じて、周王から「南方を鎮定せよ」との命を受け、積極的に周辺諸国を征服し、楚の領土を拡大しました。その勢力拡大は目覚ましく、楚は急速に強大化していきました。

しかし、この楚の台頭は、周辺諸国からの警戒を招きました。斉の桓公は、宰相管仲の進言を受け、楚を討伐しようとしますが、成王は桓公の圧倒的な軍事力の前に和睦を結び、斉が主導する会盟に参加せざるを得ませんでした。

宋との対立と泓水の戦い

桓公の死後、宋の襄公が会盟の主宰を担おうとしましたが、成王はこれを拒否。宋を小国と見下し、将軍の子玉を派遣して襄公を侮辱しました。この事件は、宋と楚の対立を激化させます。

宋は楚への雪辱を誓い、泓水（こうすい）で楚と激突しました（泓水の戦い）。しかし、宋の襄公は、仁義を重んじるあまり、楚軍が河を渡り終えるまで攻撃を仕掛けず、結果的に宋軍は大敗を喫します。これが後世で語り継がれる「宋襄の仁」の故事です。

晋の文公との出会い

その後、晋（しん）の公子重耳（のちの文公）が楚に亡命してきます。成王は重耳の大器を認め、諸侯として遇し、盛大な饗応を行いました。饗宴の席で成王は重耳に将来への抱負を尋ね、重耳の返答から、晋の将来性に期待を寄せました。子玉は重耳を警戒しましたが、成王は天命を説き、重耳への厚遇を貫きます。後に成王は、秦の力を借りて重耳を晋へと帰国させました。また、斉の桓公の公子7人を楚に迎え入れ、上大夫に任命しました。

城濮の戦いでの敗北

成王は宋を攻撃しますが、晋の文公が援軍を送ってきたため、楚は撤退を決定します。しかし、令尹の子玉は、個人的な恨みから戦闘を強く主張し、成王を説得。少数の兵を残して成王は帰国しました。城濮（じょうぼく）の戦いで楚軍は大敗を喫し、子玉は責任を取って自害します。

最期と評価

晩年、成王は暴虐な公子商臣を廃し、庶子の公子職を後継者として立てようとしたものの、商臣の反乱に遭い、自害に追い込まれます。成王は死の間際、熊掌を食べたがったという逸話も残されています。商臣は穆王として即位し、成王に「霊」という諡号を与えましたが、遺体の目が閉じなかったため、「成」と改められたと伝えられています。

成王は、楚の領土拡大に貢献しましたが、晩年は内紛に巻き込まれ悲劇的な最期を遂げました。彼の治世は、楚の盛衰を象徴する重要な時代であったと言えるでしょう。

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