諡

諡（し）についての解説

概要

諡（おくりな、またはし）は、漢字文化圏において主に帝王や貴人が亡くなった際に、その生前の果たした業績を評価して贈られる名称です。特に日本や中国では多くの歴史的人物にこの名が付けられ、文化的な影響を与えています。「おくりな」という訓読みは「贈り名」を意味し、個人が生前に付けたり、死後に与えられるものです。

公的諡と私的諡

広義には国家が公式に与える公の諡と、個人が自分や他者のために付ける私的な諡が存在します。一般的に「諡」という場合、公の諡が指されます。中国では諡号を奉ることが王権の正当化や継承の意味を持っていました。

歴史的背景

古代中国においては、殷朝や周代、中期の戦国時代にその制度が形成されました。最初は先王に特異な諡号を使用していましたが、次第に一般的な制度が整い、多くの臣下や僧侶にも広まりました。このように後の諡号選定は生前の行いを考慮されるようになり、特に『逸周書』において「諡法解」が最初の記載とされています。

中国の秦の始皇帝は、臣下が死後の業績を評価することを不敬と考え、彼の治世時に立諡制度を一時廃止しましたが、前漢以降に再び実施されました。この伝統は日本においても大宝3年（703年）までに受け継がれました。

日本における諡号

日本での天皇の崩御後には、諡号（しごう）と呼ばれ、具体的な徳や貴族性を表した美名が贈られます。奈良時代から平安初期にかけては漢風諡号とともに国風諡号が併用され、先代の正統性を称え、名誉を与える意味がありました。例えば、元明[[天皇]]には「天日本根子天津御代豊國成姫」という和風諡号が贈られました。

諡号の選定と変遷

日本では天皇や高貴な人物が死後に贈られる諡号の選定は、特に儒学者や大外記が関与し生前の行いを元に定められてきましたが、後の時代においてはこの制度が徐々に衰退していきました。主に平安時代以降は、追号が主流となり漢風の影響が薄れるとともに、諡号の形式も変化しました。

また、承久の乱以後は皇室や公家による特別な呼称として使用され続け、江戸時代に至って漢風諡号の復活が見られます。さらに、明治時代には新たに施された制度に従い、元号を元にした帝号が使われるようになりました。

諡号の一般的な用途

諡号は、帝王や贵人だけでなく、軍人や僧侶、さらには功労をもたらした臣下にも与えられ、歴史上多くの人物がその名を受けています。後妃や大名に対しても贈られることがあり、特に日本では近代以降に形式が整ってきました。

さらに、日本の諡号制度は韓国やベトナムなどの周辺諸国にも影響を与え、漢字文化圏における重要な文化的要素となっています。

おわりに

諡という名称は、単なる名の贈与にとどまらず、その背後には生前の評価や社会的背景、文化的伝統が豊かに反映されています。歴史の中で変遷し続けたこの制度は、今もなお私たちに多くの知見を与えているのです。

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