成田童夢

成田童夢（なりた どうむ）

成田童夢氏は、1985年9月22日生まれの元スノーボード選手で、2006年のトリノオリンピック・スノーボードハーフパイプ日本代表を務めました。選手としての輝かしい経歴に加え、2011年の競技引退を機にマルチタレントとして転身。現在はポップカルチャータレントの肩書きを持ち、さらに2015年には会社を設立し実業家としても活動するなど、多彩な顔を持っています。日本キャスターボード協会の代表理事も務める傍ら、YouTubeでは「童夢チャンネル」を運営し情報発信を続けています。

選手としての軌跡

成田氏は、父である成田隆史氏をコーチに持ち、幼少期からスノーボードやウェイクボードといった様々なスポーツにおいて英才教育を受けました。実家の屋上にはトランポリンが設置され、そこでエア・トリックの練習を重ねるなど、独自の環境で技術を磨きました。5歳でスキー、8歳でスノーボードとウェイクボードを始め、13歳頃にはモーグル競技にも挑戦するなど、ウィンタースポーツを中心に多様な経験を積みました。大阪市立加賀屋中学校を卒業後、高校へは進学せずスノーボード競技に専念する道を選びます。これは、かつて父に声優になりたいという夢を明かした際、「まずはオリンピックに出場しろ、それから好きなことをすればいい」と諭されたためであり、成田氏は声優への道を拓くため、オリンピック出場を目標としました。

16歳でナショナルチーム強化指定選手に選ばれると、2002年3月には全日本スキー選手権大会スノーボード競技で初優勝。同年12月にはワールドカップ（ウィスラー大会）でも初の頂点に立ち、国内外で頭角を現します。2005年2月には、イタリアで開催されたワールドカップで妹の成田夢露氏と共に兄妹での表彰台を飾るという快挙も成し遂げました。しかし、その後左膝の靭帯に重傷を負うアクシデントに見舞われます。退院後には、指導方針の違いから父と対立し、実家を離れるとともに、父が運営するチーム「夢くらぶ」を脱退するという困難な時期も経験しました。そうした状況を乗り越え、2005年12月のワールドカップウィスラー大会で再び優勝を飾り、見事トリノオリンピック日本代表の座を獲得しました。

2006年のトリノオリンピック本番では、最高点で31.5を記録し予選敗退という結果に終わりましたが、父との約束であったオリンピック出場を果たすことができました。競技後には、応援への感謝と結果に対する反省のコメントを残し、一時的にメディアから姿を消します。トリノオリンピックでの滑走時には、ヒップホップアーティストKREVAの「国民的行事」を出走曲に選び、競技中はアニメ『美少女戦士セーラームーン』のオープニングテーマ『ムーンライト伝説』を聴きながら滑るなど、その個性的なスタイルも注目されました。特に、競技中に大きなヘッドホンで音楽を聴きながら滑る姿は印象的でした。

競技引退後の新たな挑戦

オリンピック出場後に続いたバッシングにより精神的なダメージを受け、競技生活から退いた後は、スノーボードから完全に離れる時期がありました。無職となり、人間不信から引きこもり生活を送った経験もあります。しかし、その後は様々な分野で新たな活動を展開します。ヒップホップグループ「きどいち!」のMC106（とうむ）として音楽活動を行った他、2010年8月には1日に1000回のブログ更新を行いギネス記録を達成しました。

2011年7月に現役引退を正式に発表すると、マルチタレントへの転身を宣言しました。アイドルユニット「D-si☆'s」のプロデューサーを務めた時期もありましたが、現在は活動を停止しています。そして、幼い頃からの夢であった声優への道も開かれます。2012年12月、アニメ『ONE PIECE』のテレビスペシャル『ONE PIECE エピソードオブルフィ 〜ハンドアイランドの冒険〜』で島民役として声優に初挑戦し、”童夢”という名前に込められた「幼き頃に持った夢を大人になっても持ち続ける」という念願を叶えました。

俳優としても活動し、2013年には舞台「Girls Rocketeer」に出演したり、茨城県小美玉市の自主制作映画「旅立ち」で非行少年役を演じたりしています。また、ポップカルチャー分野での活動も精力的に行っています。2014年にはオタ芸のハウツー本『アキバでロマンス』を監修し、自身も「キレッキレのオタ芸師」として定評があります。アニソンDJやイベントのMCとしても活躍し、アニメ、漫画、ゲームといったサブカルチャーの情報発信を積極的に行っています。「ポップカルチャータレント」として、JIBA（日本痛板協会）の名誉会長に就任するなど、この分野での存在感を確立しています。好きなアニメとして『美少女戦士セーラームーン』（特に水野亜美）、『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、『けいおん!』などを挙げており、声優の竹達彩奈さんの大ファンであることを公言しています。また、声優の水島裕氏を師匠と慕っており、SEKAI NO OWARIとも交流があるようです。

実業家として、そして現在の活動

2015年9月には、芸能プロダクションとイベント企画を手掛ける会社を設立し、実業家としてのキャリアもスタートさせました。同年10月には一般女性と結婚し、「これが本当のリア充オタク」と話題になりました。2019年4月には第一子となる長男も誕生しています。

競技解説者としても経験があり、2018年冬のオリンピック男子スノーボードハーフパイプの解説では、各選手をお弁当に例えるユニークな表現が分かりやすいと評判になりました。YouTube活動も活発で、2020年6月には5人のオリンピアンによるアスリートバラエティチャンネル『メダリストTV』を開始。同年12月からは自身の『童夢チャンネル』を本格始動させ、キャンピングカーで全国のスキー場を巡る様子などを配信しています。2021年冬からは、新潟県妙高市のアルペンブリックリゾートと提携し、スノーレジャーや様々なアクティビティを初心者にも分かりやすくレクチャーする活動も行っています。

趣味はアウトドアやスポーツで、2020年にはパックラフトやモルックの大会に出場した経験もあります。スポーツ関連だけでなく、キャンプインストラクターとバーベキューインストラクターの資格も取得しており、その多趣味ぶりが伺えます。

父はスノーボードコーチの成田隆史氏、弟はパラアスリートで平昌パラリンピック金メダリストの成田緑夢氏というアスリート一家に育ちました。競技者として世界の舞台で戦い、引退後は独自の視点と情熱でポップカルチャーやビジネスの世界に飛び込み、多様な才能を開花させている成田童夢氏は、そのユニークなキャリアパスで多くの人々を惹きつけています。

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