我れらのカープ

「我れらのカープ」とは

「我れらのカープ」は、1950年1月に制定された広島東洋カープの初代球団歌で、作詞は河西新太郎が担当しました。この歌は、広島市にもたらされた原子爆弾の影響からの復興を願う意図を込めて、1949年の年末に設立された広島野球倶楽部のために作られました。

制定の経緯

広島野球倶楽部は、中国新聞社が広報宣伝を担当し、球団歌と球団旗のデザインを募集するキャンペーンを実施しました。1949年12月13日の新聞では、「我等のカープ」と題し、歌詞と旗のデザインを募集する旨が告知されました。優れた作品にはそれぞれ1万円の賞金が授与されました。

1月3日には入選作品が発表され、河西新太郎が作詞した作品が採用されました。この歌詞には、原爆投下による街の悲劇から立ち上がろうとする広島市民の希望が表現されており、特に復興の願いが強調された内容です。

作曲と歌の歴史

作曲者については正確な情報が不足していますが、懸賞募集の際には服部良一に作曲を依頼すると記載されていました。しかし、その後の資料には作曲者に関する情報が見当たらないため、服部が実際に作曲したのかは不明です。球団史においても、この歌についての具体的な楽譜や作曲者名は記載されていません。

歌は創設期に作られた応援歌ではあるものの、当時はあまり歌われる機会が少なかったとされています。しかし、これが広島カープのアイデンティティの一部として、ファンの記憶に残る存在であることは間違いありません。

球団の苦境と歌の変更

広島カープは、発足当初の3シーズン中に給料の遅配が表面化して、合併構想が持ち上がるなど経営難に直面しました。1952年には3期目にして最下位を脱したものの、1953年には「広島カープの歌」（作詞：池田真琴、作曲：山本寿）に代替わりしました。この新しい歌では、河西が過去に応募した「広島カープ応援歌」が佳作として入賞しています。

「我れらのカープ」は、早くも10年足らずで使用終了となり、その後は新たな球団歌に代わっていきました。河西が作った他の歌詞も、阪急ブレーブスの「阪急ブレーブスの歌」などで使用され、作詞家としての評価を深めています。

現在の状況

同時に制定された球団旗は引き続き使用されたものの、広島野球倶楽部が株式会社へ改組した1956年に新デザインに変更されました。その後もデザインは何度か変わり、1967年には現在の「H」の文字があしらわれたデザインに落ち着きました。

「我れらのカープ」は短期間でその幕を閉じましたが、広島カープの歴史を味わううえで重要な一章として、今も多くのファンの心に残っています。

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