戦争概論

戦争概論

『戦争概論』は1838年にフランスの軍人かつ軍事学者アントワーヌ＝アンリ・ジョミニによって発表された、戦争術に関する古典的な著作です。この書は同時代のカール・フォン・クラウゼヴィッツによる『戦争論』と並び、多大な影響を持つ名著とされています。ジョミニは普遍的な戦争の原理を重視し、それが後の軍事理論や兵棋演習の基礎になっています。

本書の概要

ジョミニは、戦争に関する理論を大きな枠組みで捉えられることが重要であると強調しました。彼のアプローチは、古典力学や数学と同様に、戦争の戦略・戦術を普遍的な理論のもとに説明できるとするものでした。しかし、ジョミニ自身、戦争が科学としての側面だけではなく、その複雑性から技術的な側面を併せ持つことも指摘しています。彼は戦争の原理を「内線作戦」に求めており、これは迅速な攻撃を通じて敵を個別に制圧する軍事思想に結びついています。

ジョミニの理論は、多くの歴史的戦闘の事例、特にフリードリヒ大王やナポレオンの戦争に見られるように、決勝点を突くことの重要性を示しています。これは時に批判を受けることもありますが、クラウゼヴィッツもこのアプローチの実用性について一定の評価を与えています。また、アメリカの海軍軍人アルフレッド・セイヤー・マハンもジョミニから多くの影響を受け、その理論を海軍戦術に応用しています。

章構成

『戦争概論』は、序文を除いて8つの主な章に分かれています。具体的には、次のような章題があります：

1. 戦争と政治の関係
2. 軍事政策
3. 戦略
4. 大戦術と戦闘
5. 戦略的または戦術的な作戦
6. 機動部隊の兵站または実践的技術
7. 諸兵科連合部隊
8. 結論

これらの章では、戦争の種類、軍事制度、統制、作戦、補給線、攻撃と防御、戦闘配置や遭遇戦、部隊の種類（歩兵、騎兵、砲兵）といった幅広いテーマが取り扱われています。

戦争の原因

ジョミニは、戦争を引き起こす主な原因を6つに分類しています。

• - 権利の回復と保守
• - 国益の維持
• - 勢力均衡
• - 政治的・宗教的信条の普及
• - 領土の拡大
• - 征服欲求の達成

戦争の目的によって作戦の規模や戦略が変わることをジョミニは指摘し、権利回復のための戦争は、その正当性が重要であると述べています。また、外国に干渉する戦争は勢力均衡を保つという点で利益をもたらす可能性があります。

軍事政策

軍事政策に関して、ジョミニは敵国民の敵愾心を和らげ、自国民を鼓舞することの重要性を強調します。勝利に結びつく理由を持った指揮官は部隊の士気を高め、戦争の成功に寄与します。

戦略と戦術

戦略とは、作戦全体を計画する技術であり、戦術はその戦略に基づいて現場で行動する方法です。戦闘では、防御、攻撃、遭遇戦などの形式が存在します。特に遭遇戦では、双方が準備せずに戦闘に突入することが多く、指揮官の判断が重要になります。

兵站の役割

ジョミニは兵站を軍事行動の基盤と捉え、特に行軍中の補給線の維持が重要であると強調します。情報収集や通信方法も兵站の重要な構成要素であり、ナポレオンの電信通信を例に、情報の迅速な収集が戦争に与える影響を示しています。

社会的・歴史的背景

『戦争概論』の内容は、ジョミニの研究成果を土台にした軍事学の発展に貢献しました。彼の理論は19世紀の軍事研究者たちに大きな影響を与え、多くの学者や実践者によって引き継がれ、進化していきました。特に、彼の研究は海上戦略を形成したマハンにも影響を与え、現在の軍事学の基盤となっています。これにより、ジョミニの理論は軍事学の枠を超え、さまざまな分野での研究に活用されることとなったのです。

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