戦国ロックはぐれ牙

『戦国ロックはぐれ牙』

『戦国ロックはぐれ牙』（せんごくろっくはぐれきば）は、1973年 8月4日から9月29日にかけてフジテレビ系列で放映されたテレビ時代劇です。C.A.Lが制作を担当し、全9話で完結しました。放送時間は毎週土曜日の22時30分から23時25分でした。

概要

戦国時代の混乱期を舞台にした本作は、危険な雇われ仕事を請け負う孤高の女剣士「はぐれ牙」こと冴の活躍を描いたアクション時代劇です。主演に当時人気絶頂だった梶芽衣子を迎え、彼女の代表作である『野良猫ロック』シリーズの時代劇版という位置づけで企画されました。

しかし、視聴率が振るわなかったことから、残念ながら当初の予定よりも大幅に短縮され、わずか9話で放送が打ち切られてしまいました。このため、現代において作品を全話通して視聴することは困難です。

2024年現在、本作のDVDやBlu-rayなどのビデオソフト化は一切行われておらず、また各種オンデマンド配信サービスでの提供もありません。この状況から、本作は一部の時代劇ファンや出演者のファンの間で、「幻の時代劇」としてソフト化が強く望まれています。

主な登場人物

冴（さえ）

物語の中心となる主人公です。その生まれや過去については一切明かされていませんが、請け負った仕事を必ず完遂する正確さから「はぐれ牙の冴」の名は諸国に知れ渡っています。剣術、鞭術、忍術、さらには変装術まで、あらゆる武芸や戦術に精通しています。普段は鋭い眼光と冷徹な態度で相手を寄せ付けませんが、虐げられている弱者に対しては深い慈愛を示す人間的な一面も持ち合わせています。その独特な衣装は、後の時代のパンタロンスタイルを彷彿とさせるような異彩を放っています。

虎の兵衛（とらのひょうえ）

天下統一という大きな野望を抱き、各地で陰謀を巡らせる私兵集団の首領。部下からは「殿」と呼ばれ畏敬されています。目的達成のためには手段を選ばない冷徹さと狡猾さを持つ一方、武士としての仁義を重んじる心や、立場の弱い相手には非情になりきれない情け深い部分も併せ持っています。冴とは敵対関係にありますが、共に危機を乗り越える中で互いを認め合い、友情を深めていきます。演じたのは峰岸隆之介です。

竜の左門（りゅうのさもん）

日々の暮らしを雇われ仕事で凌ぐ野武士。冴とは古くからの付き合いで、互いに気兼ねしない腐れ縁の関係です。酒好きで、どこか刹那的で軟派な雰囲気を漂わせています。しかし、剣術は超一流の腕前を持ち、戦況を見極める優れた戦略眼も備えています。冴が危ない状況に陥った際には、その能力を発揮して彼女を救い出す重要な存在です。演じたのは夏木陽介です。

スタッフと主題歌

制作には、企画として吉村敏、プロデューサーとして浅野英雄、湯沢保雄が名を連ねています。迫力ある殺陣は林邦史朗が手掛けました。音楽は大野雄二が担当しており、その楽曲は作品の世界観を印象付けています。主題歌「はぐれ節」は、作詞を大谷実、作・編曲を大野雄二が担当し、歌唱は主演の梶芽衣子が自ら手掛けました。この主題歌の劇中用テイクの一部音源は、後に人気テレビアニメシリーズ『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』のサブタイトル表示時に使用される短いブリッジ曲に転用されたことでも知られており、特筆すべきエピソードです。

再放送とソフト化の現状

本放送終了後、本作は時代劇専門チャンネルやホームドラマチャンネルなどのCS放送において、幾度か再放送が行われています（例：2006年11月、2009年9月～11月、2014年4月～6月、2016年6月～7月）。これらの再放送により、本放送を見逃した視聴者や、後年の時代劇ファンにも作品が届けられる機会が生まれました。

しかし、現在に至るまでパッケージソフト化や配信は実現しておらず、視聴できる機会はCS放送での不定期な再放送に限られています。そのため、全話を通して改めて作品を鑑賞することは極めて難しい状況にあり、ファンからのソフト化への期待は根強いものがあります。

『戦国ロックはぐれ牙』は、放送期間は短かったものの、梶芽衣子演じる魅力的な主人公像、異色の世界観、そして大野雄二による音楽など、今なお語り継がれる要素を持つ作品と言えるでしょう。

戦国ロック はぐれ牙