戦役

戦役（せんえき）

戦役（せんえき）とは、戦争全体を分析し、記録するために、特定の期間や地理的な範囲に区切って捉えられる概念です。これは、戦争状態にある敵対する両軍が、互いに関連を持ちながら展開する一連の軍事行動の総体を指します。戦役は戦争の一つの局面であり、部隊の機動、戦闘、偵察、休止期間など、戦場での様々な活動の積み重ねによって成り立ちます。

戦役概念とその範囲

「戦役」の語源はラテン語の「campus」（平地、練兵場）にあります。古くは、冬季に軍事活動を停止する習慣から、春から秋にかけての一年間に行われる軍事活動を指しました。長期的な戦争でも、この季節的な区切りが「戦役」と見なされました。

時代が下ると、地理的に離れた複数の地域で同時に行われる軍事行動も、相互に干渉しない範囲で地域ごとに「戦役」として区分されるようになりました。特定の戦域における一連の活動をまとまりとして捉えるためです。

戦役には、以下のような戦場での軍事行動が含まれます。

戦闘や会戦
部隊の移動、行軍
偵察、警戒活動
両軍が対峙した際の休止期間

一方、以下のような戦争全体の管理に関わる事柄は通常含まれません。

兵員の募集・訓練
兵站、補給計画
軍事費の管理
外交、政治的な駆け引き

戦役は主に、戦場の指揮官の視点から見た行動の総体であり、戦争を分析するための便宜的な区分です。特に近代以降は、軍事行動の継続化や範囲拡大により、厳密な区切りが難しくなる傾向があります。

他の軍事用語との関係

作戦: 戦役またはその一部の具体的な計画です。作戦名が戦役名となることもありますが、戦役は計画外を含む行動総体です。
戦略: 戦役を含む戦争全体の目標達成に向けた高次の計画や技術です。戦略が戦役の大方針を決定します。

日本における「戦役」概念

かつての日本の軍事用語「役」「戦役」（例：「明治二十七八年戦役」）は、特定の戦争全体の呼称や軍事動員を指すことが多く、本項で述べる戦争内部の区分概念とは異なります。現代的な意味での「戦役」は、主に西洋の軍事思想導入後に使われるようになりました。

戦役とは、戦争を理解・分析するための歴史的・地理的な背景を持つ概念です。

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