戦後猟奇犯罪史

戦後猟奇犯罪史

『戦後猟奇犯罪史』（せんごりょうきはんざいし）は、1976年に公開された日本の映画作品で、東映京都撮影所が製作し、東映が配給を担当しました。この作品は、戦後に実際に発生した凶悪な猟奇事件を題材としたオムニバス形式の映画です。併映作品には千葉真一主演の『脱走遊戯』があります。

概要

本作は、西口彰事件、克美しげる事件、大久保清連続殺人事件という三つの実際の事件を描写しており、事件に関与した人物の名前は実名から変えられていますが、事件の内容は大きく変えていません。主演は室田日出男、五十嵐義弘、川谷拓三の三名が務めており、繊細な演技が光ります。

事件の内容

西口彰事件

このエピソードでは、詐欺を伴った殺人事件に焦点が当てられます。室田日出男が演じる西本明とその関係者たちの心理的な闇が浮かび上がる描写が特徴です。

克美しげる事件

この事件は、K歌手の風見のぼるによる空港での死体遺棄を描いたもので、興味深い視点から猟奇的な犯罪心理に迫ります。演者たちの緊迫した演技が場面を盛り上げています。

大久保清連続殺人事件

この最終エピソードは、連続的な強姦と殺人が絡む事件を扱っています。川谷拓三演じる久保清一を中心に、様々な人間模様と心理的葛藤が描かれ、観る者にショックを与えます。

製作経緯

本作の企画は、当時の東映社長、岡田茂によるもので、初めは『ドッキリ昭和猟奇犯罪史』というタイトルで進められていました。岡田社長は、人気テレビ番組『ウイークエンダー』を参考に、映画がバラエティ番組の要素を取り入れるように指示しました。このように、映画が情報番組を模倣するという珍しいアプローチが採用されたのです。監督の牧口雄二は、過去の名作のスタイルを意識しながら、作品に深みを持たせようとしましたが、新しい組合せに戸惑っていたというエピソードもあります。

撮影時のエピソード

撮影において、特に印象深い場面では、川谷拓三が内村レナ演じるキャラクターを襲うシーンが知られています。監督からの指示はおおまかであり、本気でその行為を再現するように求められ、NGを繰り返しながらも、その緊迫感が画面に刻まれました。

日本映画における実録犯罪の流れ

日本の映画界は長い間、実録犯罪を対象とした作品を作り続けてきました。特に東映は、実録犯罪映画の製作において積極的な姿勢をとり続け、歴史的な作品を数多く残しています。本作もその流れの中に位置づけられるものであり、実録犯罪映画愛好者にとっても重要な作品と言えるでしょう。

まとめ

『戦後猟奇犯罪史』は、映像化されることの少ない重大な事件に焦点を当て、深い洞察を与えてくれる作品です。各エピソードが描く心理描写と凶悪事件の再現は、観る者に強いメッセージを残します。これにより、ただの娯楽映画としてだけでなく、社会への警鐘としても機能しています。今なお多くの人々に影響を与え続けているこの作品は、実録犯罪映画の一つの頂点をなすものと言えるでしょう。

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