戦時体制

戦時体制

戦時体制（せんじたいせい）とは、近代以降の戦争において、国家が戦争努力を最優先課題として、その実現のために様々な政策を推進する体制を指します。これに対する概念は、平時体制（へいじたいせい）です。

概要

戦時体制の概念は、フランス革命戦争期のフランスにさかのぼります。この時期、初めて国民を全面的に動員した体制が整えられ、恐怖政治の下で様々な非常措置が施行されました。この戦時体制下では、軍需物資の生産を最大限に高めるために、企業と国民が組織化され、必要な人材が動員されました。しかしその結果、個人の権利やプライバシーが制限されることも少なくありませんでした。

第二次世界大戦時、日本は1938年に国家総動員法を制定し、1940年には大政翼賛会と大日本産業報国会を結成して、戦時体制の確立を目指しました。この体制は、当時経済的に孤立していたソビエト連邦の戦時共産主義政策を参考にしたものでした。しかし、日本の航空機生産数や粗鋼生産量は、アメリカ合衆国やソビエト、さらにはイギリスやナチスドイツと比較しても低いものであり、経済政策としての成果は限定的でした。

国際的な比較において、日本の生産目標は平時よりも過大に設定されていたため、その実情は複雑です。世界恐慌からの早期回復を果たした日本は、戦時体制に入る直前に日本で高い生産水準に達していたため、他国との生産量比較では低迷した結果となったのです。しかし、戦時体制の経済統制の手法は、戦後の経済政策に大いに役立ちました。企業の構造や財政の仕組みにおいて、日本特有の要素は多くが戦時体制にその起源を持っています。現在の日本社会体制も、戦時総動員体制による影響を色濃く受けています。

国家としての総力戦を勝ち抜くためには、あらゆる資源を最大限に活用する必要があります。このため、戦地に送られた男性の役割を女性が担うことが求められ、これにより社会における性的役割分業の見直しや女性の社会進出が促進されました。結果的に、これが戦後の女性の地位向上に寄与した側面もあります。

総力戦体制論

「危機の時代」すなわち1919年から1939年までの間には、19世紀的な階級社会から20世紀型のシステムへと転換が進みました。この過程で、社会の構成員が均質化され、人的資源や物的資源が効率よく動員されるシステムが整いました。この変革は、戦後の日本社会の基礎を形成したとも言われています。

思想の面では、自由主義的な言論は抑圧され、国家主義的な見解が力を持ちました。一方で、社会論や文化論における様々な萌芽が見られ、これが今日の問題にアプローチする起点ともなっています。戦時体制は、単なる戦争遂行のためのものではなく、その後の社会構造にも大きな影響を与えた重要な時代だったと言えます。

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