戦時共産主義

戦時共産主義とは

戦時共産主義（せんじきょうさんしゅぎ）は、ロシア内戦の期間においてソビエト・ロシアが導入した特異な政治・経済体制を指します。この体制は、戦争の影響で通常の経済機構が崩壊したという背景の下、ボリシェヴィキが都市部や赤軍に必要な武器や食料を供給するために採用しました。1918年6月に最高国民経済会議が実施を決定し、1921年3月の新経済政策（ネップ）の導入により、事実上終了しました。

戦時共産主義の主要政策

戦時共産主義には以下のような政策が含まれます。

1. 企業の国営化と中央統制：あらゆる企業が国営化され、厳格に中央政府による管理が強化されました。
2. 外国貿易の国家独占：国家が外国貿易を独占し、市場の管理を強化しました。
3. 労働者の規律維持：ストライキに対しては銃殺といった厳しい措置が取られることもありました。
4. 非労働者階級に労働義務：富裕層など「非労働者階級」にも労働義務が課せられました。
5. 穀物割当徴発制度：農民から重要な食糧を除いた余剰分を徴発し、都市部への分配が行われました。
6. 食料と日用品の配給制：中央からの配給制度に基づき、市民に物資が分配されました。
7. 私企業の廃止：私企業は徹底的に非合法化され、中央政府の管理に置かれました。
8. 鉄道の軍事的統制：交通手段も軍に準じた厳格なシステムで管理されました。

これらの政策は、内戦の混乱下にあり、しかしロシア全体がボリシェヴィキの支配下にはなく、各地で独断的な対応が繰り広げられる状況で実施されました。

戦時共産主義に対する見解

「戦時共産主義」が本当に戦時の必要性から生まれたのか、または内部政治の更なる共産化を目指した意図的な方策だったのかについては、いまだに意見が分かれています。ある幹部らは、内戦での勝利が唯一の目的だったとし、レーニンも緊急事態に即した方針だったと確認しています。一方で、歴史学者たちは、実際にはボリシェヴィキが早急に共産主義経済を導入しようとした試みだったとの見解を示しています。

戦時共産主義の結果

結果として、戦時共産主義はさらに深刻な混乱を招きました。農民は政府の苛烈な徴発に抵抗し、都市労働者も地方へ流出、物資の公正な取引は困難になり、都市部の生活条件は厳しさを増しました。1918年から1920年の間に重要な都市の大半で人口が流出し、急増する闇市と物々交換の現象を引き起こしました。ルーブルの暴落により、工業生産は大幅に減少しました。このような状況下で300万人から1000万人が命を失う結果となりました。

さらに、タンボフ反乱やクロンシュタットの反乱といった大規模な暴動も発生しました。クロンシュタットの反乱は特に衝撃的であり、これはボリシェヴィキにとって強力な支持者の裏切りを意味していました。

内戦の終結後、戦時共産主義は新経済政策（ネップ）へと移行し、経済体制が改変されていくことになります。以上のように、戦時共産主義はロシアの歴史において重要かつ困難な時代を示す象徴的な現象であったと言えます。

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