戦時民事特別法

戦時民事特別法について

戦時民事特別法（せんじみんじとくべつほう）は、昭和17年2月24日に公布された法律で、太平洋戦争下における民事関係を処理するための特別な規定を設けた法律です。この法律は、従来の民事訴訟法に代わるものとして、民事関係の円滑な処理を目的に制定されました。施行は同年3月21日から始まり、1946年1月15日に廃止されるまでの間、戦時特有の事情を考慮し、さまざまな改正が加えられました。

この法律の概要として、主に戦争による影響で民事上の期限が守れない場合には、その期限の延長が認められました。この場合、障碍が解消された日から一週間以内の延長が可能であり、これにより民事訴訟の手続きがスムーズに進むことが期待されていました。また、併せて公告に関しても官報への一本化が図られました。

民事裁判の規定

戦時民事特別法では民事裁判に関する重要な変更が行われました。以下に、その主な改正ポイントを挙げます。

1. 裁判所の土地管轄規定の緩和 : 受訴裁判所以外の裁判でも訴訟が可能となり、裁判を受ける側の利便性が向上しました。
2. 二審制の導入 : 特定の事件に対して二審制が導入され、また、一部の訴訟とその他の民事裁判との強制的な分離が定められました。
3. 攻撃防御方法の期限設定 : 裁判所が攻撃防御の方法を提出する期限を限定することができるようになりました。
4. 書類の閲覧制限 : 機密保持の観点から、書類の閲覧や謄写に制限がかけられました。
5. 呼出手続きの緩和 : 葉書や電話による呼出手続きが簡素化され、裁判所の手間が軽減されました。
6. 証人・鑑定人の聴取方法 : 証人や鑑定人の訊問は、書面での代替が可能となりました。
7. 債務者に対する措置 : 戦争の影響を受けた債務者に対しては、強制執行や破産宣告の猶予が認められ、和解の条件も緩和されました。
8. 調停制度の導入 : 民事裁判全般において調停制度が導入され、一般的な民事紛争にも調停が拡大して適用されるようになりました。

このように、戦時民事特別法は、民事訴訟の円滑化を目的に多くの改正が加わりましたが、1943年から1945年にかけて3度の改正が行われる中で、裁判官の権限がより強化されるトレンドも見られました。

廃止とその後の影響

この法律は戦後の1945年12月20日に公布された戦時民事特別法廃止法律によって廃止されましたが、廃止法律にもかかわらず、一部の規定はなお効力を保持しています。戦時からの教訓として、民事法における特別な対応が必要とされる場合において、今後の法改正や実務に影響を与えるものとなったと言えるでしょう。

戦时民事特別法は、日本の法制度において重要な役割を果たす法律であり、また戦時の特殊性に応じた特別法の必要性についても考えさせられる契機となりました。

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