戦略兵器

戦略兵器とは

戦略兵器とは、軍事作戦における戦略的目標を達成するために用いられる兵器の総称です。これは、単に戦場で敵を倒すための戦術兵器とは異なり、敵国の戦争遂行能力そのものを奪うことを目的としています。

戦略兵器の概要

一般的に戦略兵器は、敵国の重要な産業施設や軍事拠点を大規模に攻撃し、経済基盤や国家活動に重大な影響を与えることで、敵の戦争継続能力を失わせることを目的とします。特に第二次世界大戦後、核兵器が戦略兵器の中心となり、カウンターフォース戦略（敵の軍事力を直接攻撃する戦略）や、カウンターバリュー戦略（敵の都市や産業基盤を攻撃する戦略）の手段として用いられてきました。近年では、環境改変兵器などの非核戦略兵器も戦略兵器として議論されています。

対照的に、戦術兵器は戦場での限定的な戦闘行為に使用され、戦略兵器のような国家レベルでの影響を与えるものではありません。しかし、戦術核兵器のように、戦術的な目的で使用される核兵器も存在します。

国際条約における戦略兵器の規定

戦略兵器の概念は、国際条約においても重要なテーマとなっています。1991年にアメリカとソ連の間で締結された第一次戦略兵器削減条約（START I）では、戦略攻撃兵器の削減について合意されました。条約では、戦略攻撃兵器の定義は厳密には定められていませんが、規制対象となる兵器システムを具体的に列挙することで、戦略攻撃兵器の範囲を明確化しました。

START Iにおいて規制対象となった戦略攻撃兵器は以下の3つです。

1. 大陸間[[弾道ミサイル]]（ICBM）: 射程が5500km以上の弾道ミサイルで、米本土とソ連本土間を射程に収めるものが対象です。
2. 潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）: 潜水艦から発射される射程600km以上の弾道ミサイルです。
3. 重爆撃機: 以下のいずれかの条件を満たす爆撃機です。
燃料満載かつ7.5トンの武装を搭載した状態で、空中給油なしで航続距離8000km以上であるもの。
射程600km以上の長距離核巡航ミサイル（ALCM）を運用可能なもの。

これらの兵器は、核兵器運搬手段として規定されていますが、条約の定義に合致する非核兵器も規制対象となる可能性があります。

歴史的変遷

かつて、大砲を用いた海戦が戦争の勝敗を左右した時代には、戦艦が戦略兵器として重視されていました。戦艦は、各国の軍事力の象徴であり、軍縮条約の対象にもなるなど、国際的なパワーバランスに大きな影響を与えました。しかし、第二次世界大戦後、核兵器の登場によって戦略兵器の概念は大きく変化しました。

1948年、国際連合通常軍備委員会において、核兵器、化学兵器、生物兵器が大量破壊兵器として分類され、通常兵器と区別されるようになりました。しかし、これらの兵器に対する個別の禁止・制限条約は制定されたものの、戦略兵器としての統一的な概念は確立されませんでした。

冷戦時代には、戦略核兵器が戦略兵器の代表格となり、アメリカとソ連の間で核兵器開発競争が激化しました。しかし、核戦争がもたらす壊滅的な結果を避けるため、両国は戦略的安定の強化を模索し、戦略兵器の数と質を制限する条約締結へと進みました。SALT I、SALT II、START Iなどの条約を通じて、戦略兵器に対する共通認識が形成され、その制限が進められました。


戦略兵器は、国家間の軍事バランスや国際情勢に大きな影響を与える兵器です。その開発、保有、使用は、常に国際社会の関心事であり、厳格な規制が求められています。

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