戦略的イノベーション創造プログラム

戦略的イノベーション創造プログラム（SIP）：日本の科学技術イノベーションを牽引する国家プロジェクト

日本の経済再生と持続的な成長のためには、科学技術イノベーションが不可欠です。この認識の下、政府は総合科学技術・イノベーション会議を司令塔として、府省の枠を超えた戦略的イノベーション創造プログラム（SIP）を創設しました。SIPは、基礎研究から実用化・事業化までを一気通貫で推進する国家プロジェクトであり、日本の科学技術イノベーションをリードする役割を担っています。

SIPの背景と目的

少子高齢化やグローバル化の進展など、日本が直面する様々な課題を克服し、持続可能な社会を実現するためには、革新的な科学技術の開発と社会実装が不可欠です。SIPは、こうした課題意識から生まれた国家プロジェクトです。内閣総理大臣や科学技術政策担当大臣のリーダーシップの下、我が国全体の科学技術を俯瞰し、総合的かつ戦略的な政策立案と調整を行うことで、科学技術イノベーションを促進することを目指しています。

SIPの特徴

SIPは、従来の府省別縦割り行政の枠を超えた、画期的な取り組みです。その特徴は以下の通りです。

課題選定: 社会的・経済的に重要な課題を総合科学技術・イノベーション会議が自ら選定します。
府省・分野横断: 関係府省庁が連携し、分野横断的な取り組みを推進します。
一気通貫の研究開発: 基礎研究から実用化・事業化まで、研究開発プロセス全体を一体的に推進します。規制緩和・制度改革、特区制度、政府調達などを活用し、国際標準化も視野に入れています。
知財システム: 企業が研究成果を戦略的に活用しやすい知財システムを構築します。

SIPの実施体制

SIPの円滑な運営のため、以下の体制が整備されています。

プログラムディレクター（PD）: 各課題ごとにPDが選任され、関係府省庁を横断的に統括します。PDは内閣総理大臣が任命し、強力なリーダーシップを発揮してプログラムを推進します。推進委員会を設置し、関係府省庁と連携しながら課題解決に取り組みます。
ガバニングボード: SIPの基本方針、研究開発計画、予算配分、フォローアップなどを審議・検討する運営会議です。専門家による評価結果に基づき、SIPの運営方針等を改善していきます。

SIPの予算

SIPは、政府予算案において専用の予算が確保され、関係府省庁に配分されます。これは、産学官連携を効果的に推進するための重要な仕組みです。当初は内閣府を中心に関係10省庁から拠出された科学技術振興費の一部を「科学技術イノベーション創造推進費」として内閣府に計上し、SIPと健康・医療戦略に予算配分されました。

SIPのプログラム

SIPでは、エネルギー、次世代インフラ、地域資源など、日本の社会課題解決や産業競争力強化に資する11の課題が選定されています。各課題には、PDが選任され、産学官連携の下、研究開発が推進されます。具体的なプログラム例としては、革新的燃焼技術、次世代パワーエレクトロニクス、革新的構造材料、エネルギーキャリア、次世代海洋資源調査技術、自動走行システム、インフラ維持管理・更新・マネジメント技術、レジリエントな防災・減災機能の強化、重要インフラ等におけるサイバーセキュリティの確保、次世代農林水産業創造技術、革新的設計生産技術などがあります。

SIPの成果発信

SIPの成果を広く社会に発信するため、様々な活動が行われています。

SIPシンポジウム: 年1回開催され、研究成果や社会実装に向けた取り組みが発表されます。
SIPキャラバン: 外務大臣科学技術顧問が中心となり、日本の科学技術イノベーションの取組を海外に発信しています。

SIPの沿革

SIPは、2013年の閣議決定を経て本格的に始まりました。その後、課題の選定、PDの任命、研究開発の開始、成果の評価など、段階的に進められてきました。現在も、新たな課題の追加や既存課題の継続など、常に進化を続けています。

まとめ

SIPは、日本の科学技術イノベーションを推進するための重要な国家プロジェクトです。府省横断、産学官連携による革新的な研究開発体制を構築し、社会課題の解決と経済成長に大きく貢献しています。今後も、SIPの取り組みは、日本の未来を担う上で重要な役割を果たしていくでしょう。

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