戦略論 (リデル＝ハート)

『戦略論』 - バジル・リデル＝ハートの戦略学の名著

『戦略論』は、イギリスの軍事学者バジル・リデル＝ハートによって著された戦略学の代表作であり、原題は『戦略 間接アプローチ』です。この著作は、戦争の新しい形態や戦略の原則について深く考察し、リデル＝ハート自身の経験を基にした理論が展開されています。

リデル＝ハートの生涯と背景

リデル＝ハートは1895年にフランスで生まれ、ケンブリッジ大学を経て第一次世界大戦に将校として参加しました。戦後、彼は軍事評論家として執筆活動を開始し、特に第二次世界大戦の危機が高まる中ではイギリスの参戦に反対の立場を取るなど、独自の視点を貫きました。本書は、彼の独自の戦略理論を示す重要なテキストとして位置づけられています。

戦争の形態とリデル＝ハートの批判

リデル＝ハートが生きた時代は、戦争の形態が大きく変わることを目の当たりにしました。第一次世界大戦の勃発は、国家総力戦という新たな戦争の様相を生み出し、戦争の規模と期間は前例のないものとなりました。彼は、こうした戦争形態への批判を高め、独自の戦略理論を形成しました。「間接アプローチ」という概念は、彼の戦略的考察の中心を占め、敵に直接アプローチするのではなく、間接的に攻撃し、敵の心理的な均衡を崩すやり方が重要であると述べています。

著作の構成と内容

『戦略論』は、戦史の記述が中心であり、その中で戦略理論が展開されています。本書は4部構成となっており、第1部は古代から20世紀までの戦略、第2部は第一次世界大戦の戦略、第3部は第二次世界大戦の戦略、第4部は戦略や大戦略の基本事項を扱っています。

古代から20世紀までの戦略

まず、リデル＝ハートは歴史における数多くの戦争事例を挙げて、間接アプローチ戦略の有効性を証明しています。彼は特にアレクサンドロスの遠征やナポレオンの戦術を分析し、間接的な攻撃が持つ力を強調しています。戦争においては直接的な攻撃が必ずしも最良の選択肢でないことを示し、時には地形を利用して敵を混乱させることが成功をもたらすと論じています。

第一次世界大戦の戦略

次に、第一次世界大戦についてリデル＝ハートは、当時の戦略がどのように機能したのかを探求しています。特に、ドイツのシュリーフェン計画について詳細に記述し、戦争前に計画されていた戦略がどのように実行され、またどのように失敗を招いたかを分析しています。

第二次世界大戦の戦略

第二次世界大戦におけるヒトラーの軍事戦略の変遷も重要なテーマです。初期の段階では間接アプローチを取り入れていたヒトラーが、途中から直接的な攻撃へと方針を変更したことの影響を考察し、戦争の流れや結果にどのように寄与したかを検討しています。

間接アプローチ戦略の理論

リデル＝ハートの間接アプローチ戦略の理論は、敵との対峙において心理的な要素を重視します。敵の予測を裏切ることで、より効果的に勝利を収めるためには、敵を混乱させる手法が重要であり、この理論は現代の戦略研究にも大きな影響を与えています。彼は戦略を単に軍事的手段の配分に留まらず、政治的目的実現に向けた手段と捉えており、戦略行動の本質を理解する上での貴重な視点を提供しています。

結論

リデル＝ハートの『戦略論』は、戦争を取り巻く思考を革新する重要な著作です。多くの戦史を通じて導き出された戦略の原則は、現代でもなお有効な洞察を与えています。この本は、戦略学の研究者や実践者にとって、欠かすことのできない情報源となるでしょう。

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