戦車揚陸艦

戦車揚陸艦（LST）について

戦車揚陸艦、英語で「Landing Ship, Tank（LST）」は、海岸に直接着岸する能力を持ち、特に重い貨物や車両を効率的に揚陸できる揚陸艦の一種です。この艦型は、第一次世界大戦中の経験を元に必要性が認識され、その後の第二次世界大戦で広く用いられることとなりました。

LSTの歴史

第一次世界大戦以前、上陸部隊は通常、軍艦から小型のボートで陸に向かう方法を取っていました。しかし、この方法は重量物や車両の輸送には不向きで、そのために専用の揚陸艦の開発が求められていました。1940年代、アメリカと日本の軍はそれぞれ独自にLSTの設計を進め、その結果としてアメリカのLST-1級は第二次世界大戦において重要な役割を果たしました。特にDデイ（ノルマンディー上陸作戦）での活躍が有名です。

戦後もLSTは世界各国で運用されており、その特性から補給や後方支援に特化した艦も増えてきました。これにはLanding Ship, Logistic（LSL）やLogistics Support Vessels（LSV）と呼ばれる艦が含まれます。

設計の特徴

LSTの設計上もっとも重要な点は、ビーチング機能です。これは艦が水面上を漂わせることで、波や潮流に影響され難く、安定して着岸できるという機能といえます。艦のデザインは、その特殊な任務に特化しており、通常の軍艦とは異なります。

特に艦の前方部、すなわち艦首には大型の開口部があり、跳ね橋状の道板、すなわちバウランプが適用されています。これにより、艦は直接水際で車両を降ろすことが可能です。また、ビーチング時には艦首が浅くなるように設計されており、安全に着岸するための工夫がなされています。

特殊装置と構造

LSTは浮力を保持するために、艦内の特定の区域に水を貯めるバラストタンクを設けており、これにより艦の喫水を調整することができます。ビーチング後は艦の先端を固定し、スムーズな揚陸をするためにもこの機能は不可欠です。病気や安全面での懸念を考慮し、艦尾にも揚錨機が装備されることが一般的です。

内装は、艦尾に機関室と艦橋を配置し、艦首部分には車両と貨物を搭載するスペースがあります。この車両甲板は、戦車やトラックを含む多数の荷物を固定するために、多数の金具が設けられています。さらに、大戦後の艦には上下両方で荷物を揚卸するためのランプが設置された艦も存在します。

現代の揚陸艦とLSTの役割

現代においては、LSTの役割は変化してきています。上陸作戦での先鋒部隊は、ヘリコプターやエア・クッション型揚陸艇（LCAC）などが担うようになり、LSTはより後方支援に特化した艦として運用されています。

そのため、かつての戦車揚陸を重視した設計から、補給や輸送を重視した設計へと、それに伴った新たな艦種の開発が進められています。

このように、戦車揚陸艦（LST）はその歴史とともに進化し続けており、その特性は今なお軍事海上作戦において重要な役割を果たしています。

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