戸倉貞則

戸倉貞則について

戸倉貞則（とくら さだのり、1650年頃 - 1720年頃）は、江戸時代前期に活動した豊後国の郷土史家で、特に顕著な業績として『豊府聞書』を著した人物です。貞則は府内（現在の大分市）の西郊、沖ノ浜に在住しており、この地域の歴史や文化に深い関心を持っていました。この地誌は、豊後の歴史を纏めた重要な資料であり、現在に至るまでその価値は高く評価されています。

略歴

戸倉貞則が書いた『豊府聞書』は、全七巻から成り、豊後の神社や仏閣、祭りの変遷について詳細に述べられています。特に、巻頭には万寿寺揚宗が寄せた序文、巻末には岡藩の儒者である関載甫の跋文が入っており、重要な文化人との交流を示しています。この序文から、貞則は商人としての職業を持っていたことが分かります。また、文化人としての教養があったとする意見も多く、彼の業績が後の時代に影響を与えたことは間違いありません。

貞則の生年や没年については不詳ですが、関載甫の跋文が記された年から推測して彼が1714年まで生きていた可能性があります。また、彼の著作は大友家との関係が深いことを示唆しており、豊後の歴史を語る上での基盤となる資料を提供しています。

豊府聞書の内容

『豊府聞書』は、建久年間から明暦年間までの約五百年にわたる豊後の歴史を記した地誌であり、古老の口伝や古文書に基づいています。この作品は、神社仏閣の興廃、祭祀の出現と消失を詳細に記録しており、地域の歴史を理解するための貴重な情報源となっています。

一方で、この著作は貞則自身の自発的な活動によって生まれたものであり、藩の命令や支援を受けることはなかったため、執筆には非常に多くの時間がかかりました。彼は古い記録を集めたり、地元の人々からの聞き取り調査を実施したりすることで、驚くべき努力を持ってこの仕事を成し遂げました。一般に、執筆には約10年を費やしたと見られています。

伝承の中の戸倉貞則

興味深いことに、貞則についての詳細な情報は後世の地誌でほとんど言及されていません。例えば、『豊後国志』や『雉城雑誌』では、彼の著作からの引用はあっても、彼自身に関する記録は欠けています。これは、当時の混乱した時代ではなく、情報が記録されるべき時代にあっても彼の存在が薄いことを示しているため、彼は謎多き人物として歴史に残ってしまいました。

再発見された写本

『豊府聞書』は現存する原本や写本がないとされていた時期もありましたが、既に1955年には個人が所蔵する写本の存在が確認されています。また、岡藩の藩校であった由学館に存在していた別の写本が国立国会図書館に所蔵されています。これに伴い、貞則の作品が後世に残されたことは幸運な出来事であり、今でも彼の努力と知識を直接感じ取ることができます。

まとめ

戸倉貞則は江戸時代の豊後国において、地域の歴史を後世に伝えるための重要な役割を果たしました。その著作『豊府聞書』は、当時の文化や歴史を知るための貴重なベースであり、彼自身の歴史的名声を築くものとなりました。彼の存在を確認することが、地域の歴史をより豊かに理解する手助けとなるでしょう。

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