戸名厚

戸名 厚（とな あつし）

日本の実業家として知られる戸名 厚氏は、食品および菓子業界において指導的な役割を果たしてきました。特に、経営危機に直面していた製菓会社カンロの再建を成功させた功績は広く認められています。1952年11月3日に神奈川県で生まれた戸名氏は、長年にわたり商社、そして食品メーカーの経営者として活躍しました。

経歴の始まりと商社時代

戸名氏のキャリアは、神奈川県立湘南高等学校を経て、東京工業大学工学部を卒業した1976年に始まりました。卒業後、総合商社である三菱商事に入社。以来、同社の食糧・食品部門を中心に経験を積んでいきます。地方拠点である九州支社の生活産業部長や、中部支社の副支社長兼生活産業部長といった要職を歴任し、食品流通および関連産業に関する深い知見とネットワークを培いました。

食品メーカー経営者として

三菱商事での長年の経験を経て、戸名氏は食品メーカーの経営へと舞台を移します。2008年には、澱粉（でんぷん）などを製造する日本食品化工の代表取締役社長に就任しました。この期間、同氏は日本スターチ・糖化工業会会長も兼務し、関連業界の発展にも貢献しました。

カンロの再建を牽引

戸名氏のキャリアにおいて特に注目されるのは、製菓会社カンロの代表取締役社長として行った経営再建です。2014年に同社のトップに就いた際、カンロは約6億円の赤字を計上するなど、厳しい経営状況にありました。戸名氏は、この危機を乗り越えるべく、抜本的な改革に着手します。その戦略の中心となったのは、「選択と集中」でした。採算の取れていなかった海外事業からの撤退を決断するなど、事業ポートフォリオの見直しを進めました。そして、リソースを国内市場に集中投下し、長年愛されてきた看板商品である「カンロ飴」などを核とした商品戦略を展開しました。

この国内市場への注力と効率化策が功を奏し、カンロの業績はV字回復を遂げます。戸名氏が社長に就任して間もない2015年12月期には、見事に黒字転換を達成し、同社の経営を立て直すことに成功しました。

菓子業界における貢献

カンロの社長を務める傍ら、戸名氏は菓子業界全体の発展にも寄与しました。全日本菓子工業協同組合連合会では副理事長を務めるなど、業界の重要人物としてその手腕を発揮しました。

まとめ

戸名 厚氏は、商社での経験を基盤に、日本食品化工、そして特にカンロにおいて経営者として顕著な成果を上げました。特にカンロを赤字から黒字へと導いた再建手腕は、多くの経営者にとって模範とされています。食品・菓子業界におけるその長年の功績は、日本の産業史において重要な一章を刻んでいます。

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