戸塚美波子

戸塚 美波子（とずか みわこ）について

戸塚美波子は1948年に北海道白糠町で生まれ、日本のアイヌの詩人として知られている。彼女の人生は、社会の不条理に対する深い意識と、それに対する積極的な反応によって形作られてきた。

影響を受けた出来事

1968年、アメリカ合衆国の黒人指導者マーティン・ルーサー・キング・ジュニアが暗殺され、そのニュースが戸塚に強い衝撃を与えた。当時彼女は、アメリカで起こっている人種差別の現実と自身のアイヌ民族としての立場に共鳴を感じ、深い思索を促される。特に、彼女は黒人の抗議運動に対して見られた暴力的な対応を見て、アイヌも同様の差別を受けていると実感したのである。

同じ年、北海道では開拓百周年記念事業が進行中であったが、この事業はアイヌ民族の存在を無視しているとして、戸塚は北海道新聞に投書を行った。この行動は、アイヌ民族が抱える問題を公にする契機となり、彼女はそうした活動を通じて声を上げるようになった。「お祝いことだけにしようとする百年行事に大きな憤りを感じ、ペンを取りました」と語るように、彼女の表現は単なる詩にとどまらず、批判的な社会的立場を明示するものであった。

詩の世界

1973年には、『北方文芸』に詩「1973年ある日ある時に」を発表し、アイヌの民族運動に関わる人々を風刺した。この詩には実在の人物がモデルとして描かれており、批判的な視点が強く反映されていたことから、当時戸塚には多くの非難も寄せられた。これにより、彼女は詩集『一九七三年ある日ある時に』を刊行し、シャモ（和人）への批判とアイヌの視点を同時に表現した作品として評価され、新聞などでも取り上げられた。

彼女は1973年に創刊された月刊新聞『アヌタアイヌ われら人間』のメンバーとしても活動し、アイヌの文化や歴史に対する理解を深める役割を果たしてきた。さらに、朝日新聞北海道版には、1973年11月から12月にかけて「私が私であることを」と題した半生記を寄稿し、自らの経験やアイヌ民族の苦境を語った。

近年の言及

2021年に発表された書籍『アイヌからみた北海道150年』に寄稿した際には、アイヌ文化についての風潮に対して考察を加え、「アイヌを名乗る人、名乗れない人、アイヌでない人に対して、アイヌの真の歴史を考えてもらいたい」と述べた。この言葉からは、彼女のアイヌとしてのアイデンティティを重視し、広めようという姿勢がうかがえる。

著作

彼女の著作には以下のものがある：

• - 『一九七三年ある日ある時に 戸塚美波子詩集』（創映出版、1981年）
• - 『金の風に乗って』（札幌テレビ放送、2003年）

戸塚美波子の詩作品や活動は、アイヌの文化的な表現を広げるだけでなく、社会的な問題提起を行う重要なものとして、今後も注目されるべきである。

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