戸川安章 (民俗学者)

戸川安章（とがわ あんしょう）

戸川安章は、1906年8月3日に東京で生まれ、2006年12月12日に100歳で亡くなった日本の民俗学者です。彼は、特に山形県の出羽三山を中心とした山岳修験道の研究でその名を知られています。その研究は、単なる学術的な探求に留まらず、地域文化の保存と発展に大きく貢献しました。

生い立ちと家族

戸川安章は、母方の祖父が備中庭瀬藩戸川家の分家である帯江戸川家の出身であり、父は荒沢寺の住職として羽黒山修験本宗を天台宗から独立させた島津伝道です。戸川姓を継ぎ、民俗学研究の道を歩みました。甥には東京創元社の編集者である戸川安宣がいます。

学歴と職歴

1930年に専修大学経済学部を卒業後、山形県東田川郡手向村（現在の鶴岡市）に移り住みました。その後、手向村の村議会議員、助役、村長代理を歴任し、地方自治にも貢献しました。1947年からは山形県立鶴岡高等女学校（現・山形県立鶴岡北高等学校）の教諭として教鞭を執り、後に同校の教頭、鶴岡女子専門学校の校長を務めました。また、荘内文化財保存会の理事も務めるなど、地域文化の保存活動にも尽力しました。

民俗学者としての業績

戸川安章は、日本民俗学の第一人者として、特に山岳修験道に関する研究で重要な役割を果たしました。出羽三山の修験道に関する詳細な調査と研究を通じて、その歴史的背景や宗教的意義を明らかにしました。彼の著作は、修験道研究における重要な文献として、現在でも広く参照されています。

地域文化への貢献

戸川安章は、地域文化の発展にも力を注ぎました。山形県民俗研究協議会の会長を務め、地域の文化遺産の保存と継承に貢献しました。また、致道博物館の顧問や荘内文化財保存会の理事として、地域の歴史や文化を広く一般に伝える活動にも積極的に参加しました。

受賞歴と栄誉

戸川安章の業績は、数多くの賞によって称えられました。1963年には高山樗牛賞、1965年には山形県教育功労賞、1972年には齋藤茂吉文化賞、1974年には柳田賞を受賞しました。また、1977年には勲五等双光旭日章を受章し、1997年には羽黒町名誉町民（現・鶴岡市名誉市民）に推戴されました。

主な著作

戸川安章は、その生涯で多くの著作を残しました。代表的なものとして、「出羽三山縁年考」、「羽黒修験の経歴法階」、「羽黒山伏と民間信仰」、「出羽三山修験道の研究」などがあります。これらの著作は、民俗学研究における重要な文献であるとともに、地域文化を理解するための貴重な資料となっています。また、著作集として「出羽三山と修験」「修験道と民俗宗教」が刊行されています。

戸川安章は、その生涯を通じて、民俗学の研究と地域文化の発展に多大な貢献を果たしました。彼の研究は、現代の民俗学研究にも大きな影響を与え続けています。

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