戸田伊助

戸田 伊助

戸田 伊助（とだ いすけ、1925年7月4日 - 2020年8月27日）は、日本のキリスト教牧師であり、日本基督教団において重要な役割を果たした人物です。特に、教団の最高責任者である総会議長を務めたことで知られ、そのリーダーシップはしばしば「相対化路線」と評されました。

生涯の歩み

戸田伊助は1925年7月4日、福島県大沼郡会津高田町（現在の会津美里町）に生を受けました。青年期には、南満州工業専門学校にて学びますが、後に召命を感じ、信仰の道に進むことを決意します。神学を学ぶため、日本基督教神学専門学校に入学し、卒業後、日本基督教団の教職として牧師の任に就きました。

牧師としての活動

牧師となった戸田は、日本各地の教会で牧会に携わりました。具体的には、熊本県にある熊本坪井教会、岡山県の岡山蕃山町教会、そして愛知県の名古屋教会などで献身的に奉仕し、それぞれの教会共同体において信徒たちの信仰生活を支え、導きました。これらの地での経験は、牧師としての彼の人格と、後の教団運営における姿勢を形成する上で重要な基盤となりました。特に、長年牧師を務めた名古屋教会は、彼の活動拠点の一つとして特筆されます。

教団におけるリーダーシップ

戸田伊助の働きは、個別の教会での牧会に留まりませんでした。彼は日本基督教団全体における様々な役職を歴任し、教団運営の中心に関わることになります。中部教区の総会議長や、教団の教憲教規に関わる重要な委員会である信仰職制委員会の委員長などを務め、教団の組織運営や神学的方向性について責任ある立場から関与しました。

そして、1973年から1978年までの5年間、彼は日本基督教団の総会議長という重責を担いました。総会議長は、教団を代表し、その意思決定を主導する立場です。この時期の教団は、過去の歴史的経緯や、多様化する社会情勢の中で、様々な課題を抱えていました。戸田総会議長の指導は、「相対化路線」と称されることがありました。これは、教団内の異なる神学的立場や意見を一方的に排斥せず、多様性を認めつつ、絶対的なものと相対的なものを峻別し、対話と共存を目指す姿勢を示していたと考えられています。彼のこのアプローチは、当時の教団の状況において、一つの重要な方向性を示したと言えるでしょう。

社会への関与と平和活動

戸田は、教会や教団の内部活動に加えて、社会的な取り組み、特に平和に関わる活動にも深くコミットしました。キリスト教信仰の実践は、個人の救いに留まらず、社会の不正や暴力に対する抵抗、平和の実現を目指すべきであるという強い信念を持っていたのです。その具体的な現れとして、岡山に在任していた頃には、平和を希求するキリスト者たちのための集まりである「岡山キリスト者平和会」を立ち上げ、その中心的な役割を担いました。彼の平和への願いは、牧師としての説教や著作にも色濃く反映されています。

著作活動

彼の神学的思索と牧会経験は、いくつかの著作として結実しました。これらの著書は、聖書のメッセージを現代の文脈の中で深く読み解き、人々の実存的な問いに寄り添う内容を持っています。主な著作として、以下のようなものが挙げられます。

『望みなき時にも』
『愛せる自由をください』
『共に生きようとされる神1-十字架につく神』
『共に生きようとされる神2-うめき』
* 『共に生きようとされる神3-愛』

これらの著作を通じて、彼は日本のキリスト教界内外の多くの読者に霊的な示唆を与えました。

晩年と永眠

2002年、戸田伊助は長年の牧師としての奉仕から引退しました。その後も、日本のキリスト教会において、彼の存在とその影響力は大きなものであり続けました。2020年8月27日、彼は敗血症により、95歳の生涯に幕を閉じました。

戸田伊助の生涯は、地方での牧会から教団の最高指導者、そして平和活動家へと広がる多様なものでした。特に、総会議長として示された「相対化路線」というリーダーシップは、日本基督教団の歴史における彼のユニークな足跡として記憶されるでしょう。彼の神学、牧会、そして社会への関わりは、多くの後進に影響を与え続けています。

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