扁平苔癬

扁平苔癬：皮膚と口腔粘膜の慢性炎症

扁平苔癬は、皮膚および口腔粘膜に発生する慢性炎症性の疾患です。特徴的な紫がかった平らな発疹（丘疹）が皮膚に現れ、口腔粘膜ではレース状や網目状の白斑として観察されます。本疾患は、皮膚の角化（細胞の成熟と剥離）の異常を伴い、表皮が厚くなることを特徴としています。

皮膚症状

皮膚症状は、栗粒大の扁平で紫がかった発疹が複数発生するのが一般的です。これらの発疹は、身体の様々な部位に出現する可能性があります。症状は慢性的に経過し、軽快と増悪を繰り返すのが特徴です。

口腔粘膜症状

口腔粘膜に発生する扁平苔癬は、頬の内側などにレース状や網目状の白い斑点として現れることが多く、両側の頬粘膜にみられるのが典型的です。まれに、癌化する可能性もあるため、白板症との鑑別診断が重要になります。皮膚病変が癌化する事例は報告されていません。

原因

扁平苔癬の明確な原因は未だ解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。遺伝的素因を持つ個体において、自己免疫反応、特に表皮基底細胞に対するT細胞性自己免疫反応が関与する可能性が示唆されています。

薬剤も原因の一つとして挙げられ、βブロッカー、NSAID、ACE阻害薬、スルホニルウレア剤、金製剤、抗マラリア薬、ペニシラミン、チアジド系利尿薬などが、扁平苔癬の発症に関与する可能性が指摘されています。

その他、ウイルス感染（特にC型肝炎ウイルス）、細菌感染、歯科用金属アレルギー、ストレスなども原因として考えられています。C型肝炎ウイルス感染者の肝臓外病変として扁平苔癬が発生するケースや、C型肝炎治療薬であるインターフェロンとの関連性が指摘されているなど、ウイルス感染との関連も複雑です。

検査と診断

扁平苔癬の診断には、専門医による病理組織学的検査が不可欠です。口腔内病変においては、金属アレルギーの可能性を検討するためにパッチテストが実施されることもあります。病理組織学的検査では、上皮下結合組織へのリンパ球浸潤、基底細胞の障害、上皮突起の鋸歯状変化、角化亢進などが観察されます。これらの組織像は、遅延型過敏症や移植片対宿主病と類似性を示す場合があります。

治療

扁平苔癬の治療には、ビタミンA製剤、ステロイド剤、光線療法などが用いられます。しかし、これらの治療法が常に効果を示すとは限らないことに留意が必要です。治療効果は患者個人の状態や病変の程度によって大きく変動します。治療法の選択は、専門医の診察に基づいて決定されるべきです。

まとめ

扁平苔癬は、皮膚および口腔粘膜に生じる慢性炎症性の疾患で、紫がかった発疹や白い斑点が特徴です。原因は多面的で、自己免疫、薬剤、感染、ストレスなどが関与する可能性があります。診断には専門医による病理組織学的検査が必須であり、治療にはビタミンA製剤、ステロイド剤、光線療法などが用いられますが、治療効果は患者によって異なります。早期発見と適切な治療が重要です。

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