扉は閉ざされたまま

『扉は閉ざされたまま』

『扉は閉ざされたまま』（とびらはとざされたまま）は、石持浅海が手掛けた日本の推理小説。本作は碓氷優佳を主人公に据えた「碓氷優佳シリーズ」の第一弾であり、作者が創作した「倒叙三部作」の一作品です。倒叙モノの様式を取り入れ、物語の冒頭から犯人が明かされている斬新な構成が特徴で、読者に新たな視点で事件の真相に迫る楽しみを提供します。

この小説は、2006年の本格ミステリ大賞で最終候補作として選ばれた他、各種ミステリーランキングにおいて高い評価を得ています。「このミステリーがすごい！」や「本格ミステリベスト10」ではともに第2位を記録し、週刊文春の同ベスト10でも第5位に入るなど、作品のすばらしさが広く認知されています。

あらすじ

物語は、大学時代に軽音楽部に所属していた酒好きの6人組「アル中分科会」を中心に展開されます。このグループは、酒に関する話題で盛り上がることが多く、軽音楽部の他のメンバーからのあだ名に過ぎない名前でしたが、実際には臓器提供の意思表示カードを持つという共通点が彼らの絆を深めていました。卒業以来初めて彼らは同窓会を開くことになり、これは再会のスリルと共に、暗い影をもたらすこととなるのです。

伏見亮輔は、同窓会の場で親友の新山和宏を殺害する計画を密かに進めます。彼の狙いは、新山を事故死に見せかけることで、遺体が発見されるのを遅らせることです。しかし、探偵役の碓氷優佳は会場内の異様な雰囲気に気付き、鋭い直観力で伏見を徐々に追い詰めていくのです。

登場人物

• - 碓氷 優佳（うすい ゆか）

アル中分科会に所属していた姉からの影響で、仲間たちと親しくなります。彼女は大学院生で火山学を研究しており、優れた勘を持っており、状況を的確に把握する能力に長けています。

• - 伏見 亮輔（ふしみ りょうすけ）

医療ベンチャー企業に勤める彼は、後輩の新山を狙って殺人を企てます。優佳に以前告白した経験があり、彼女に対する想いを抱えています。

• - 大倉 礼子（おおくら れいこ）

優佳の姉で、伏見の一級後輩。料理が得意な彼女は、酒肴を楽しむことに熱中していました。

• - 石丸 孝平（いしまる こうへい）

伏見の二級後輩で、福岡の大学院で研究室の助手を務めています。彼は最年少であり、国の酒文化についての知識があまりありませんが、そのお酒への強さが印象的です。

• - 安東 章吾（あんどう しょうご）

同級生の中で、今回の同窓会の発起人であり、資産家の家庭で育ちました。

• - 上田 五月（うえだ さつき）

伏見の一級先輩で、研究員として働きながらも彼女は独特のキャラクターを持っています。

• - 新山 和宏（にいやま かずひろ）

伏見の後輩で、ウイスキー愛好者。彼の死が物語の中心となります。

書籍情報

本作は2005年5月にノン・ノベルから単行本として出版され、その後2008年2月には祥伝社文庫からも刊行されています。文庫版には新たに「前夜」という章が加筆されています。

テレビドラマ

この作品は2008年にWOWOWで映像化され、黒木メイサが主演を務めました。ドラマは『君の望む死に方』と併せて放送され、視聴者からの注目を集めました。

全体として、『扉は閉ざされたまま』はミステリーとして非常に完成度が高く、読み応えのある作品となっています。

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