手永

手永制の概要

手永制とは、江戸時代に細川家が江戸時代初期に導入した地方行政の仕組みです。この制度は特に熊本藩において重要な役割を果たし、村を統括するための行政区画を形成していました。主に惣庄屋という責任者が各手永を管理し、地域の統治や基盤整備に努めました。

歴史的背景

寛永9年（1632年）、細川忠利が豊前小倉から肥後熊本に移封され、熊本藩の藩主となったことを契機に手永制が成立しました。寛永12年（1635年）には、熊本藩全体に「手永」という行政区画が設定され、村々を統合管理する構造が出来上がりました。手永は藩政時代において村と郡の中間的な存在であり、地域の社会運営に密接に関与していました。

手永の定義

手永は、藩内をいくつかの小さな行政区に分け、その一区画を指します。江戸時代の村は郡に直結しないため、いくつかの村がまとめられて「手永」と呼ばれる行政区画に収められていました。この制度においては、大庄屋が統括する区画内で行政が行われ、村庄屋がその下で村を管理しました。肥後藩ではこの地域を「手永」と呼び、責任者を惣庄屋と称しました。

制度の内容と配置

手永制においては各手永に「会所」と呼ばれる役所を設置しました。惣庄屋はこの役所の最高責任者として地域の運営を指導し、様々な業務を遂行しました。初めは100以上の手永が設置されましたが、承応2年（1653年）には59に減少し、最終的には51に固定化されました。

主要な手永

主な手永には、矢部手永（現在の山都町）、菅尾手永、坂梨手永などが存在し、特に矢部手永では布田家が歴代の惣庄屋として地域振興や基盤整備に貢献しました。通潤橋の建設は布田保之助のアイディアと経験から実現したもので、地域の発展に寄与した重要な成果と言えます。

惣庄屋の役割

惣庄屋は藩内での重要な役職で、地元の有力者や旧家臣が任命されました。任命制は時代と共に変化し、実力のある者が選ばれるようになりました。また、異なる手永での勤務を通じて人材の交流や幅広い知識を得ることができ、地方政務にも有益でした。惣庄屋は年貢の管理や対外的な藩の代表としても機能し、地域の重要な決定に関与しました。

会所と手永の変遷

各手永には会所が設置され、惣庄屋を補佐して実務を行いました。江戸時代中期には、天災や飢饉が連続して発生したため、手永は地方自治を支える基盤へと性格を変えていきました。聘任された惣庄屋は、新しい治水や道路の整備に対して重要な役割を果たし、地域の基盤整備を進める中心的な存在となり、通潤橋などの重要なインフラの整備が行われました。

手永制度の終焉

しかし、江戸時代の終焉に伴い、明治新政府による廃藩置県が実施され、手永制度はついに廃止されることとなりました。その後もその影響は残り続けましたが、手永制度本来の役割は失われました。近代的な地方行政や組織の基礎は、手永制を通じて培われたものであったと言えるでしょう。

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