手焙形土器

手焙形土器の概要

手焙形土器（てあぶりがたどき）は、弥生時代の特徴的な土器の一種で、鉢形土器の上に開口のある覆いが付けられた形状をしています。手炙形土器とも表記され、その名称は手焙火鉢に似た外見に由来しますが、実際には火を使った祭祀に関連して使用されたと考えられています。ただし、多くの手焙形土器には内部に煤の付着がないことから、具体的な利用法は不明のままです。

1998年の段階で、全国で716点が確認されており、この土器は弥生時代後期から古墳時代前期にかけての遺跡から出土しています。特に畿内を中心に、群馬県から佐賀県まで幅広い地域で発見されています。

特徴と分類

手焙形土器は、祭祀用の特別な土器と推測される一方で、出土品としては住居跡が最も多く、次いで墳墓から出土することが分かっています。また、出土品の特徴として、ほとんどの場合、1つの遺構から1個体のみが見つかります。円環的な分布が確認されていることから、手焙形土器は特定の個人の所有物であったと考えられ、完形品が住居内で保管され、所有者の死後に墳墓に埋められた可能性があります。

また、破片で出土したものについては、祭祀が行われた痕跡であるとする説がある一方で、基本的には廃棄物として処理された可能性が高いとされます。手焙形土器の発展については、まず河内地域で誕生し、次に近江地域で独自の土器が作られたことが見て取れます。時が進むとともに、畿内型と近江型が同心円状に広がりました。

特に中国地方や東海地方、関東地方では、特異な出土数を示す地域が存在し、古墳時代前期には前方後円墳などが多く見られる地域と重なることも指摘されています。このように手焙形土器は、弥生時代後期に出現し、古墳時代初頭に姿を消します。その出現時期は、銅鐸が消滅した時期と重なり、また大型古墳が造営される時期とも一致している点が注目されます。

部分名称と特徴

手焙形土器は、主に二つの部位から構成されています。1つ目は「鉢部」で、燃料を入れるための部分です。鉢部の口縁には、畿内型で見られるくの字状口縁と近江型の受口状口縁があります。この鉢部の外面には煤が付着しているケースもあり、煮炊きに利用された可能性も考えられています。

2つ目は「覆部」で、鉢部の上に被せる部分です。屋外での使用において風や雨から内部の火を守る目的で設計されたと考えられています。覆部と鉢部の接合に関しては、一部では補強部材を用いることで強化され、開口部には装飾的な文様が施されることもあります。文様の種類には、斜線文や山形文など多様性が見られます。

研究史

手焙形土器の研究は1969年から始まり、続いて様々な学者によって重要な論考が発表されています。特に1985年には、岡本欣子氏が調査を進め、逸品の機能を祭祀に関連するものと考え、一部の土器が古墳時代の特定の儀式で使用された可能性を示唆しました。その後も続く研究において、接合の形状や発掘例に基づく型式分類も行われ、地域ごとの伝播が明らかにされてきました。

このように、手焙形土器は弥生時代の文化や宗教的意義を強調する重要な考古学的遺物であり、今後もさらなる研究が期待されています。

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