打木村治

打木村治（うちきむらじ）

プロフィール

打木村治は、1904年（明治37年）に大阪府で生まれ、本名を打木保（うつぎたもつ）といいました。幼少期に父親の病気をきっかけに、母親の実家がある埼玉県比企郡唐子村（現在の東松山市）に移り住み、そこで成長しました。早稲田大学政治経済学部を卒業後、大蔵省に勤務しましたが、川端康成との出会いをきっかけに文学の世界へと足を踏み入れました。

文学活動

川端康成の勧めで文学活動を始め、『作家群』を主宰しました。また、『文芸評論』に関わったことがきっかけで、1936年（昭和11年）のコム・アカデミー事件で検挙されました。しかし、翌年には『部落史』で芥川賞候補となるなど、その才能は高く評価されました。昭和初期の社会不安の中、資本主義経済の陰で苦しむ農村や都市の下層の人々を描き、農民文学作家としての地位を確立しました。農民文学懇話会にも参加し、農民文学運動を推進しました。

戦後は、『農民文学』を創刊し、児童文学の世界にも活動の幅を広げました。

受賞歴

1957年（昭和32年）には、『夢のまこと』で小学館児童文化賞を受賞。その後も、1972年（昭和47年）に埼玉文化賞、同じ年に『天の園』で芸術選奨文部大臣賞、さらに1973年（昭和48年）には同作でサンケイ児童出版文化賞を受賞しました。1976年（昭和51年）には児童文化功労者として表彰され、1978年（昭和53年）には『大地の園』で日本児童文芸家協会賞、1979年（昭和54年）には勲四等瑞宝章を受章しました。

その他の活動

1990年（平成2年）5月29日に86歳で亡くなりました。没後、2018年（平成30年）から、彼の代表作である『天の園』と『大地の園』をNHK連続テレビ小説の原作にしようという運動が、作品の舞台である入間市で起こっています。また、東松山市下唐子の唐子中央公園内には、『天の園』の文学碑が建てられています。

主な著作

『部落史』（1938年）
『支流を集めて』（1939年）
『光をつくる人々』（1939年）
『般若』（1940年）
『温き歴史』（1940年）
『自然の祭』（1941年）
『農村の姿と構想』（1942年）
『春の門』（1942年）
『狐火と歩哨』（1943年）
『拓けゆく国土 満洲国義勇隊ものがたり』（1944年）
『酪農』（1944年）
『魔女としじゅうから』（1950年）
『ゲーテ 永遠の巨星』（1952年）
『生きている山脈』（1953年）
『ミケランジェロ 文芸復興期の巨匠』（1953年）
『希望のこのみち』（1955年）
『十六歳』（1959年）
『みだれる季節』（1959年）
『雲の階段』（1963年）
『天の園』（1972年）
『花のトンネル』（1977年）
『大地の園』（1978年）
『二宮金次郎 農と村に生きた尊徳』(1982年)
『打木村治作品集』（1987年）

まとめ

打木村治は、農民文学というジャンルを確立し、社会の底辺で生きる人々への温かい眼差しと、力強い描写で多くの読者の心を掴みました。また、児童文学においても数々の名作を生み出し、その作品は今もなお多くの人に愛されています。

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