扱
扱についての徹底解説
扱（あつかい・噯）は、日本中世から近世にかけて実施されていた紛争解決のための仲裁や調停の手法を指します。この制度は、地域社会の秩序を保つために重要な役割を果たしていました。
扱の基本概念
中世の日本においては、個人や複数の第三者（中人）を通じて行われる扱が広く認識されていました。どのような階層の人々、すなわち領主から庶民までがこの制度の下で利用され、内容も民事事件から刑事事件、さらには合戦のような武力衝突に関連する問題にまで及んでいました。扱は、争いごとを解決するための選択肢として、地域における合意や和解の仕組みを形成するものでした。
折中（の法）
扱の特徴的な原則は「折中（の法）」として知られています。この原則は、当事者双方の主張を調整することにより、双方の均衡感覚を満たすことを目的としています。この方法は、後の和与のシステムにも影響を与える重要な要素となりました。
戦国時代の変化
しかし、戦国時代に入ると、領主間の争いが激化し、権力の集中が進んだ結果、紛争や刑事課題の解決が、より上位の権力者による判断へと変化していきました。この流れの中で、扱の存在意義は次第に薄れていきました。
江戸時代の扱と取扱
江戸時代にはこの制度は取扱（とりあつかい）として知られるようになり、仲介を行う者は「扱人（あつかいにん）」、あるいは「噯人」と呼ばれました。主に地域の名士や役人、僧侶などがこの役割を果たし、コミュニティ内での調停を進めていました。江戸幕府は、民事裁判に直接関与しない政策をとり、当事者同士の話し合いによる解決である内済（ないさい）を基本としました。このため、扱人は内済を行うことで、双方の合意形成を助けることが求められました。
扱人は、時には江戸幕府の役人とともに、当事者に対して和解を迫る姿勢を見せることがありました。さらに、地域共同体秩序の維持を視野に入れ、双方への圧力をかけることもありました。
刑事裁判との違い
一方で、刑事裁判（吟味筋）については異なったアプローチが取られ、初期には扱による和解も認められていましたが、次第にそれが禁じられるようになりました。このように民事と刑事では扱の対応が対照的であり、それぞれに特有の手続きが定められました。
書類の重要性
内済の成立に際しては、内容を記録した文書が重要であり、それぞれの当事者が記名し捺印することで有効となりました。時には、扱人もこの文書に連署することがあったため、扱の公式な記録は信頼のあるものとされました。
参考文献
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