抱きしめたい (Mr.Childrenの曲)

Mr.Childrenの代表曲『抱きしめたい』：時代を超える名曲の軌跡

1992年12月1日、Mr.Childrenの2枚目のシングル『抱きしめたい』が発売されました。2ndアルバム『Kind of Love』と同時リリースされたこのシングルは、Mr.Childrenのシングルとしては初めて横長のジャケットデザインを採用しており、アートディレクションは信藤三雄が担当しました。ジャケットデザインは次のシングル『Replay』にも受け継がれています。

意外なデビューとその後

アルバムにも収録されていたこともあり、オリコンチャート最高順位は56位と、発売当初は一部のラジオ局を除いて大きな話題にはなりませんでした。しかし、この曲はその後、静かに長く愛され続けることになります。オリコン調べでは累計売上は6万枚ですが、1995年には日本レコード協会からゴールドディスクに認定（旧基準、出荷枚数20万枚以上）され、その潜在的な人気を示唆していました。

その後、『COUNT DOWN TV|COUNT_DOWN_TV』で1994年から1995年にかけてランクインし、最高46位を記録するなど、徐々に知名度を上げていきます。そして2023年6月には、表題曲「抱きしめたい」のストリーミング再生回数が5000万回を突破、再びゴールド認定を受けるという快挙を達成しました。この事実は、この曲が時代を超えて愛され続けていることを証明しています。

楽曲の誕生秘話：クリスマスソングから永遠のラブソングへ

桜井和寿は「抱きしめたい」について、「前向きなラブソングを書きたいと思って作った」と語っています。別れを描いた曲はあったものの、Mr.Childrenには前向きなラブソングが少なかったため、永遠に歌い続けられるラブソングを目指したとされています。

当初はクリスマスソングとして発表する予定で、「震えそうな夜に」という歌詞は「クリスマスの夜に」にする予定でしたが、プロデューサー小林武史の反対により変更されました。しかし、2005年と2009年のクリスマス時期の東京ドーム公演では、特別に「クリスマスの夜に」と歌われたエピソードも残っています。

元々は桜井の友人であるJUN SKY WALKER(S)の宮田和弥の結婚式のために制作された曲で、歌詞にはJUN SKY WALKER(S)の曲名がちりばめられていましたが、時間の都合で披露されることはありませんでした。

また、デモテープ段階ではサビの転調はなかったものの、小林武史のアイデアにより、イントロとサビでB♭、ラストサビでCへの転調が加えられ、楽曲に深みが増しました。イントロのアレンジは、メンバーの鈴木英哉の考案によるものです。

多様なタイアップとカバー：広がり続ける「抱きしめたい」

「抱きしめたい」は、1996年のフジテレビ系ドラマ『ピュア』の最終回で挿入歌として使用され、2017年にはNTTドコモのCMソングにも起用されました。さらに、発売当時には矢崎総業のCMソングにも起用されており、アマチュア時代から存在していた楽曲に初めてタイアップが付いた曲でもあります。

この曲は多くのアーティストにカバーされており、河村隆一、杏里、KANなど、幅広いアーティストが「抱きしめたい」を自身の作品に取り入れています。

ミュージックビデオとライブパフォーマンス

パリで撮影されたミュージックビデオは、2018年発売のライブ映像作品『Mr.Children DOME & STADIUM TOUR 2017 Thanksgiving 25』に収録されています。監督は信藤三雄です。

ライブでは定番曲として演奏されており、数々のライブ映像作品にも収録されています。GACKTは自身の自伝で、「抱きしめたい」を聴いた時の感動を綴り、桜井和寿の才能に嫉妬したと明かしています。

「君の事以外は何も考えられない」：もう一つの魅力

カップリング曲である「君の事以外は何も考えられない」は、桜井和寿が当時交際していた女性をイメージして作られた曲で、サビの歌詞は全て同じです。アマチュア時代からライブで演奏されており、初期のライブでは鈴木英哉のコーラスが入っていたそうです。この曲は2007年発売のアルバム『B-SIDE』に収録され、同アルバムでは最古の曲となっています。

盗作問題：残念な影

2015年には、平浩二のシングルに収録された楽曲「ぬくもり」の歌詞が「抱きしめたい」と酷似していると指摘され、盗作問題が発生しました。徳間ジャパンコミュニケーションズは出荷停止と回収を発表、返金対応を行いました。作詞者の沢久美は盗作を否定しましたが、徳間側は酷似を認め対応に追われました。

まとめ：時代を超えて愛される名曲

発売当初は大きな話題にならなかったものの、その後、CMソングやドラマ挿入歌への起用、そして多くのアーティストによるカバーなどを通して、広く愛されるようになった『抱きしめたい』。ストリーミング再生回数5000万回突破という数字は、この曲の持つ普遍的な魅力と、時代を超えた人気を物語っています。Mr.Childrenを代表する楽曲として、これからも多くの人々に歌い継がれていくことでしょう。

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