抱神者シメオン

抱神者シメオンは、新約聖書のルカによる福音書に登場する重要な人物です。彼の物語は、イエス・キリストの誕生という、キリスト教の根幹に関わる出来事と深く結びついています。

抱神者シメオンとは

「抱神者」という称号は、シメオンが幼子イエスを抱いたという行為に由来します。正教会において、この称号は彼が神であり人であるイエスを抱いたことを示す聖人としての特別な意味を持ちます。正教会以外の教派では、「預言者シメオン」「聖シメオン」「老シメオン」といった名称で呼ばれることもあります。これは、彼が単にイエスを抱いた人物というだけでなく、神の計画における重要な役割を果たした存在として認識されていることを示しています。

ルカによる福音書におけるシメオン

ルカによる福音書2章25節から35節には、シメオンの物語が記されています。この箇所によれば、シメオンは聖霊によって、メシア（キリスト）を見るまでは死ぬことはないと啓示されていました。敬虔な人物として描かれるシメオンは、その約束を信じ、メシアの出現を待ち望んでいました。

そして、ついに彼はエルサレム神殿で幼子イエスに出会います。聖霊に導かれて神殿にやってきたシメオンは、イエスがメシアであることを悟り、彼を抱き上げます。この時、シメオンは有名な賛歌を歌います。これが「ヌンク・ディミティス」または「シメオンの賛歌」として知られる祈りです。

シメオンの賛歌（ヌンク・ディミティス）

シメオンの賛歌は、ルカによる福音書2章29節から32節に記されており、カトリック教会の『ヌンク・ディミティス』、正教会の『聖抱神者シメオンの祝文』の基となっています。この賛歌は、神がその約束を果たしたことに対する感謝の表明であり、全世界を照らす光としてのイエスの役割を預言するものです。

シメオンは、イエスを抱き上げ、以下のように歌いました。

「主よ、今こそ、あなたがお言葉どおり、この僕を安らかに去らせてくださいます。私の目があなたの救いをみたからです。これは万民のために備えられた救いで、異邦人を照らす啓示、あなたの民イスラエルの光です。」

この言葉は、シメオンがイエスをメシアとして認識しただけでなく、イエスがイスラエルだけでなく、全世界の救いのために遣わされた存在であることを理解していたことを示唆しています。

関連する祭りと祈り

シメオンの物語は、キリスト教の祭りと祈りにも深く関わっています。

主の迎接祭（聖燭祭）: この祭りは、幼子イエスが神殿に連れてこられた出来事を記念するもので、シメオンがイエスを抱き上げた場面が重要な要素となります。
聖抱神者シメオンの祝文（ヌンク・ディミティス）: シメオンが歌った賛歌は、様々な典礼で用いられ、特に晩の祈りの中でよく歌われます。

まとめ

抱神者シメオンは、単に福音書に登場する一人の人物にとどまらず、神の救いの計画における重要な役割を担った人物です。彼の信仰と、メシアを待ち望む姿勢は、今日に至るまで多くの人々に感銘を与え続けています。また、彼が歌った賛歌は、キリスト教の典礼音楽や祈りの重要な一部として、その精神を今に伝えています。

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