押坂彦人大兄皇子

押坂彦人大兄皇子（おしさかのひこひとのおおえのみこ）

押坂彦人大兄皇子は、生没年は不詳ですが、飛鳥時代における重要な皇族のひとりです。彼は敏達天皇と広姫の間に生まれた第一皇子であり、これにより、当時の皇族の中でも特別な地位を占めていました。押坂彦人皇子、麻呂古皇子、太子彦人皇子、忍坂日子人太子という別名でも知られる彼ですが、今日の皇室は押坂彦人大兄皇子の男系子孫にあたります。

生涯と王位継承の背景

この皇子は、敏達天皇の第一皇子として誕生しました。彼の母である広姫は息長真手王の娘でした。押坂彦人大兄は、蘇我氏の血を引かない敏達王統の中で最も有力な人物であり、独立した財政基盤を持つ忍坂部や丸子部を支配していました。王都から離れた水派宮に住んでいたとされています。

彼が王位継承者として候補に挙がったのは、用明天皇が崩御した587年以降も考えられます。しかし、蘇我系の王族が台頭する中で、彼の活動に関する記録はほとんど残っていません。このため、押坂彦人大兄が蘇我氏によって暗殺されたのではないかという憶測もあります。しかし、享年に関しては諸説あり、彼は592年の推古天皇即位後も一定期間生存していた可能性が高いです。

彼は、皇位継承権において蘇我系の竹田皇子や厩戸皇子とも肩を並べる地位にありました。607年には、王位継承者を支える壬生部が設置されていることからも、彼がその時点で亡くなっていた可能性が示唆されます。

墓とその規模

『延喜式』の記録には、押坂彦人大兄皇子の墓について詳細が記されています。その墓は成相墓と呼ばれ、奈良県広瀬郡に所在し、現在の大仙陵古墳の10倍以上の規模であったと考えられています。現代では、奈良県広陵町にある牧野古墳がその場所ではないかとの研究も進められています。

財政基盤と歴史的影響

押坂彦人大兄が治理していた忍坂部や丸子部は「皇祖大兄御名入部」として知られ、その私領は後に彼の息子である舒明天皇から、孫の中大兄皇子（後の天智天皇）に引き継がれました。これらの財政的基盤が、大化の改新後の国家返納に寄与したと考えられており、押坂彦人大兄の死後も、彼の系譜は蘇我氏や上宮王家と対抗し、大化の改新を実現する重要な力を持っていました。

系譜の詳細

押坂彦人大兄皇子の系譜は、主に『古事記』を基にしています。彼は物昭的な結婚関係を持ち、多くの妃を娶っています。中でも、敏達天皇と推古天皇の皇女たちである小墾田皇女、桜井弓張皇女との結婚は特に重要です。また、彼には茅渟王（智奴王）や舒明天皇など、後の皇族にもつながる子供たちがいました。

このように、押坂彦人大兄皇子は、飛鳥時代の歴史において大きな影響を与えた存在であり、彼の血筋は今日の皇室にまで受け継がれています。

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