押領

押領（おうりょう）とは

押領とは、古代・中世日本の法律用語で、主に以下の二つの意味で使用されていました。

1. 兵士の監督・統率: 古代において、兵士を監督し、統率することを指しました。この意味合いから、後に兵士を率いて治安維持にあたる役割を担うようになり、令外官として押領使が設置されました。

2. 所領や年貢の侵奪: 平安時代中期以降の荘園制下においては、武力などの実力を用いて、他人の所領である田畑や、そこから得られる年貢を奪い取り、支配する行為を指すようになりました。本項では、この荘園制下における押領について詳しく解説します。

荘園制下における押領

平安時代中期以降の荘園制が確立した社会では、土地の所有権やそこから得られる収益（知行）を巡る争いが頻繁に発生しました。この中で、武力やその他の実力を用いて他人の所領や年貢を侵奪する行為が押領と呼ばれました。当初、押領は明らかに不法な行為であり、処罰の対象でしたが、時代が進むにつれて、正当な権利を持つ者が実力を行使して自身の権利を回復する場合も押領と呼ばれるようになりました。つまり、押領という言葉は、単なる不法な侵奪行為だけでなく、実力行使全般を指す言葉として用いられるようになったのです。

押領への対抗策

押領の被害を受けた者は、自己の知行を回復するために訴訟を起こすことができました。しかし、訴訟による解決には時間がかかり、その間に押領された状態が続くことも少なくありませんでした。そのため、実力による対抗も行われることがあり、社会不安の一因となっていました。

御成敗式目における押領

鎌倉幕府が制定した武士のための基本法である御成敗式目には、押領に関する厳しい規定が設けられています。具体的には、不正な方法で他人の所領や年貢を押領した者は、押領した物を元の所有者に返還するだけでなく、自身の所領も没収されると定められています。また、所領を持たない者は遠流に処せられるという厳しい罰則が科せられました。さらに、知行年紀法の対象外とされたため、長期間の占有による権利の主張も認められませんでした。これは、押領行為に対する強い抑止力となることを目的としたものです。

押領のまとめ

押領とは、元々は不法な侵奪行為を指していましたが、時代とともに実力行使一般を指す言葉としても使われるようになりました。特に、荘園制下の社会では、所領や年貢を巡る争いの中で頻繁に行われ、社会秩序を乱す要因となりました。御成敗式目のような厳しい罰則が設けられたのも、押領行為を抑制し、社会の安定を図るためでした。

関連項目

* 堺打越

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