拓跋余

拓跋余（たくばつ よ）は、北魏の第3代皇帝である太武帝の末子として生まれました。しかし、彼の皇帝としての道のりは、わずか数ヶ月という短いものでした。

生涯

442年、拓跋余は呉王に封じられ、その後451年に南安王に改封されました。彼の運命が大きく変わったのは、452年2月のことです。太武帝が宦官の宗愛によって暗殺されるという事件が発生しました。この時、尚書左僕射の蘭延や侍中の和疋・薛提らは、事件を伏せて太武帝の長子である東平王拓跋翰を擁立しようとしました。

しかし、宗愛は拓跋翰を憎んでいたため、赫連皇后の命令であると偽り、蘭延らを禁中に呼び出して捕縛し、殺害しました。さらに、拓跋翰も永巷で殺害するという暴挙に出ました。そして、宗愛は自らの意のままに動かせる南安王拓跋余を擁立したのです。

宗愛は大司馬・大将軍・太師という要職を独占し、北魏の朝政を壟断しました。拓跋余は群臣の歓心を買おうと、むやみに褒賞を乱発し、国家の財政を枯渇させました。また、彼は政治に関心を示さず、飲食や音楽、狩猟に耽溺する日々を送りました。宗愛の専横ぶりを快く思わず、その職権を奪おうとしましたが、これが宗愛の怒りを買い、同年10月、東廟で夜半に祭祀を行っている最中に、宗愛によって暗殺されてしまいました。

宗愛もまた、文成帝の即位後すぐに宿衛に捕縛され、処刑されました。拓跋余の短い治世は、宗愛の専横と自身の政治的無策によって幕を閉じたのです。文成帝は、叔父である拓跋余を王の礼をもって手厚く葬りました。

拓跋余は、正統な皇帝として認められることはありませんでしたが、北魏の歴史において、その名が刻まれています。

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