招魂社競馬

招魂社競馬について

招魂社競馬（しょうこんしゃけいば）は、1870年から1898年にかけて東京の麹町区九段にある招魂社（現在の靖国神社）で行われた競馬イベントです。この競馬は日本人による初めての洋式競馬とされ、当初は陸軍によって主催されていました。競馬は招魂社の例大祭の際に行われ、特に多くの観客が訪れる盛況なイベントとなっていました。

歴史的背景

招魂社は1869年に建立され、その敷地内には約900メートルの細長い馬場が設けられました。この馬場は曲がりくねった設計が特徴で、競馬が行われる際には陸軍の軍馬が参加しました。1870年9月23日に行われた例大祭で初めて公式の競馬が開催され、1871年1月には第2回目の競馬も行われました。

1871年5月の例大祭では陸軍によって賞品が用意され、競馬はより一層盛り上がりを見せました。例えば、懐中時計や羅紗戎服地などが賞品として出され、観客の関心を引くことに成功しました。この競馬イベントは、陸軍だけでなく一般の参加者による出走も認められており、競馬自体が広がりを見せていました。

競馬の運営と盛況

毎年行われる競馬は、招魂社の年三回の例大祭や臨時祭に合わせて実施され、その中でも特に人気のあったイベントでした。1882年以降は、例大祭の最初の2日間中に競馬が行われる形式が定着しました。時が経つにつれ、出走馬の数や賞金も増加し、1896年には268頭の馬が出場したこともあります。そのため、観客席は毎回満員となり、多くの人々が競馬を楽しみに集まりました。

招魂社競馬の影響

招魂社競馬は、ただの余興というだけでなく、馬の品種改良にも寄与していました。競馬で優れた成績をあげた馬は、他の競馬場でも出走されることがあり、その結果、軍が選んだ馬の質が向上しました。また、観客には外国人も含まれており、イギリス公使館付の医師が競馬を観戦し、優れた馬を見出して購入した事例もあります。

終焉と後の影響

しかし、1898年には場所の狭さが問題となり、招魂社競馬は中止されました。1901年には馬場自体が廃止され、競馬はこの地での歴史に幕を下ろしました。招魂社競馬は、明治時代の文化的背景や陸軍の役割、さらには市民文化の発展などを考える上で重要な事例となっています。

参考文献

• - 東京市麹町区 編『麹町区史』、東京市麹町区、1935年。
• - 靖国神社『靖国神社百年史』、1987年。
• - 日本中央競馬会『日本の競馬史』第2巻、1967年。
• - 他、多数の資料

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