拡張漢字

拡張漢字とは

拡張漢字とは、文字コードにおいて、もともと存在していた漢字に追加された漢字の総称です。これらの漢字は、UnicodeやJISなどの規格で標準化されており、情報処理の分野で重要な役割を果たしています。

Unicodeにおける拡張漢字

Unicodeにおける拡張漢字は、初期のUnicode規格（Unicode 1.0）に含まれていたCJK統合漢字20,902字に追加された漢字群を指します。これらの拡張漢字は、CJK統合漢字拡張AからJまで、段階的に追加されてきました。

CJK統合漢字拡張A

1999年に制定されたUnicode 3.0で追加された6,582字の漢字です。基本多言語面に位置し、地名や人名など、使用頻度の低い漢字が含まれます。JIS X 0213にも一部対応しています。当初は6,584字の予定でしたが、2文字が互換漢字領域にあったため、削除されました。2020年のUnicode 13.0で、さらに10字が追加されました。

2001年に制定されたUnicode 3.1で追加された42,711字の漢字です。追加漢字面に位置し、Unicodeの拡張漢字の中では最も多い字数です。日常ではあまり使用されない漢字が多いですが、JIS X 0213に一部対応し、地名や人名に用いられる漢字も含まれます。また、ベトナムで使用されていたチュノムも含まれています。この拡張Bは短期間で膨大な漢字が追加されたため、字形の重複や誤りが多く見られます。2020年のUnicode 13.0で、さらに7字が追加されました。

CJK統合漢字拡張C

2008年に発行されたISO/IEC 10646の追補5に含まれ、Unicode 5.2で対応しました。追加漢字面のU+2A700からU+2B734までの範囲に4,149文字が追加されました。

CJK統合漢字拡張D

2010年に発行されたISO/IEC 10646:2010に含まれ、Unicode 6.0で対応しました。追加漢字面のU+2B740からU+2B81Dまでの範囲に222文字が追加されました。

CJK統合漢字拡張E

2014年に発行されたISO/IEC 10646:2014に含まれ、Unicode 8.0で対応しました。追加漢字面のU+2B820からU+2CEA1までの範囲に5,762文字が追加されました。

CJK統合漢字拡張F

2017年に発行されたISO/IEC 10646:2017に含まれ、Unicode 10.0で対応しました。追加漢字面のU+2CEB0からU+2EBEFまでの範囲に7,488文字が追加されました。文字基盤整備事業や大蔵経テキストデータベース委員会からの提案、チワン語やプイ語で使用される古壮字が含まれています。

CJK統合漢字拡張G

2020年のUnicode 13.0に含まれており、第三漢字面のU+30000からU+3134Aまでの範囲に4,939文字が割り当てられました。Unicode史上初めて第三漢字面に文字が割り当てられた拡張です。

CJK統合漢字拡張H

2022年のUnicode 15.0に含まれており、第三漢字面のU+31350からU+323AFまでの範囲に4,193文字が割り当てられました。

CJK統合漢字拡張I

2023年のUnicode 15.1に含まれており、追加漢字面のU+2EBF0からU+2EE5Fまでの範囲に622文字が割り当てられました。

CJK統合漢字拡張J

拡張I以降に追加が計画されている漢字です。2024年9月のUnicode 16.0で、第三漢字面のU+323B0からU+3347Bまでの範囲に4,300文字が追加予定です。

JIS拡張漢字

JIS X 0213は、「7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合」という正式名称を持ち、JIS X 0208を拡張する形で制定されました。このため、JIS拡張漢字と呼ばれています。

ベンダ選定拡張漢字

主にメインフレームで使用するために、各ベンダが独自に文字コードを拡張した際に、JIS X 0208を拡張する形で追加された漢字を指します。ベンダごとに共通する漢字も多いですが、互換性はありません。NECとIBMによる拡張漢字は、そのシェアの大きさからWindowsに取り込まれ、共通して使用されるようになり、後の規格制定にも影響を与えました。

その他の拡張漢字

かつてのパソコンでは、漢字を使用するために漢字ROMチップ等のハードウエアが必要でした。ハードウエアの増設によって使用できるようになった漢字も拡張漢字と呼ばれることがありました。