拡散燃焼

拡散燃焼：炎の謎に迫る

燃焼は、物質が酸化することで熱と光を放出する現象です。その中でも、拡散燃焼は最も一般的な形態の一つであり、私たちの生活に深く関わっています。火災やジェットエンジンの燃焼、工業炉など、様々な場所で拡散燃焼は発生しています。

拡散燃焼と予混合燃焼：ブンゼンバーナーで理解する

拡散燃焼の特徴は、酸素が炎の外側から拡散によって供給される点にあります。これに対し、予混合燃焼では、可燃物と酸素が事前に混合された状態で燃焼します。

この違いは、身近なブンゼンバーナーで分かりやすく説明できます。空気供給口を開けている状態では、ガスと空気が混合し予混合燃焼が起こります。一方、空気供給口を閉じると、ガスのみが噴出し、周囲の空気と混合しながら燃焼します。これが拡散燃焼です。周囲の空気の供給によって燃焼が維持されるため、爆発は起こりません。

ただし、実際には予混合燃焼と拡散燃焼の境界は曖昧です。ブンゼンバーナーで空気供給量を徐々に減らしていくと、予混合燃焼から拡散燃焼への移行は連続的で、明確な境目を特定することは困難です。

層流拡散火炎と乱流拡散火炎：安定性と不安定性

拡散燃焼には、層流拡散火炎と乱流拡散火炎の2種類があります。層流拡散火炎は、可燃物がゆっくりと流れ、安定した燃焼を示します。ブンゼンバーナーでガス噴出速度が遅い場合がこれに当たります。火炎の長さは、ガスの流速と流量に比例して変化します。

しかし、ガス噴出速度を上げていくと、ある時点で火炎の境界が不安定になり、乱流が発生します。乱流拡散火炎では、火炎は激しく揺らぎ、騒音を発生します。さらに速度を上げると、「火炎の吹き飛び」という現象が起こり、火炎がバーナーから離れて空中で燃焼するようになります。逆に速度を下げると、「火炎のもどり」が起こり、火炎がバーナーに戻ります。

まとめ：多様な拡散燃焼

拡散燃焼は、酸素供給方法、可燃物流速、周囲環境など、様々な要因によってその挙動が変化する複雑な現象です。火災の発生メカニズムや、ジェットエンジン、工業炉などの設計・制御において、拡散燃焼の理解は極めて重要です。本稿では、ブンゼンバーナーを例に、拡散燃焼の基本的な性質を解説しました。より詳細な理解のためには、流体力学や熱力学の知識が必要となります。

参考文献

疋田強『火の科学』《化学の話シリーズ 3》培風館、1982年。ISBN 4-563-02016-8
沖山博通（編）『図解 危険物施設の消火設備』オーム社、1987年。ISBN 4-274-10055-3

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