拾翠亭

拾翠亭：九条家の雅を今に伝える茶室

拾翠亭（しゅうすいてい）は、京都御苑内にひっそりと佇む茶室です。江戸時代後期、五摂家の一つである九条家の別邸として建てられ、茶会や歌会など、優雅な催しの場として利用されていました。九条家の屋敷建物の中で、唯一現存する貴重な遺構であり、当時の文化や美意識を今に伝えています。

由来と意味

拾翠亭という名前には、奥深い意味が込められています。「拾翠」とは、「翠（みどり）」を拾い集めるという意味で、平安時代の貴族が新春に草花を摘む風習に由来すると言われています。また、近くの九條池に生息していた「翠（かわせみ）」にちなんで名付けられたという説もあります。どちらの説も、自然の美しさを愛でる気持ちが込められていることがわかります。

建築様式

拾翠亭は、木造瓦葺、一部柿葺の2階建てで、数寄屋風書院造りという建築様式です。建築面積は103.4平方メートルで、1階には玄関、控えの間（7畳半）、広間（10畳、茶室として使用可能）、小間（茶室3畳中板）、広縁（北・東面）、水屋（南面）があります。2階には座敷（2間半×2間半=12畳）があり、九條池や東山を借景とした美しい景色を眺めることができます。

特に注目したいのは、その眺望です。北面と東面に広がる九條池と、その奥にそびえる東山。この自然の風景を巧みに取り入れた借景は、訪れる人々を魅了し、心を癒してくれます。四季折々の表情を見せる景色は、いつ訪れても新しい感動を与えてくれるでしょう。

歴史

拾翠亭は、寛政年間（1789年 - 1801年）に建てられました。明治時代の東京奠都の後、当亭を含む公家屋敷一帯が京都御苑として整備され、九条家の屋敷建物の中で唯一現存する建物となりました。現在では、一般公開されており、多くの人々がその歴史と美しさに触れることができます。また、茶会や句会などにも利用されており、文化的な交流の場としても活用されています。

近年の動向

アメリカ合衆国の日本庭園・日本建築専門誌「Sukiya Living Magazine （The Journal of Japanese Gardening）」の日本庭園ランキング「数寄屋生活空間」において、2007年には23位、2008年には38位に選出されました。海外からもその美しさが認められていることがわかります。

2021年4月から2022年3月にかけて、約20年ぶりの改修修繕工事が行われました。これにより、建物の保全が進み、より長くその姿を後世に伝えることができるようになりました。

まとめ

拾翠亭は、九条家の歴史と文化、そして日本建築の粋を集めた貴重な文化遺産です。その美しい姿は、訪れる人々に癒しと感動を与え、日本の心を伝えてくれます。京都御苑を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。きっと、忘れられない体験となるでしょう。

拾翠亭 : 京都御苑 | 一般財団法人国民公園協会
九條池と拾翠亭 - 環境省
京都御苑（九條家の遺構・拾翠亭）の最新画像 インターネット自然研究所 ライブ カメラ

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