指紋

指紋（しもん）とは、指の先端や腹部に現れる独特の紋様のことです。これらの紋様は人々によって異なり、生涯にわたって変わることはありません。また、掌の紋様や足の裏の紋様（足紋）もこの特徴を持ち、これらを総称して皮膚紋理と呼ぶことがあります。

指紋が個々に異なる一因には、遺伝的要素が影響しているため、同じ遺伝子を持つ一卵性双生児であっても、指紋は異なります。指紋のパターンは人種や地域によっても違いがあり、日本人の間では特に渦状紋が一般的です。

ただし、指紋が存在しない状態を示す遺伝病もあります。例えば、先天性指紋欠如疾患やネーゲリ症候群など、特有の指の紋様を持たない人々がいます。また、台湾では両手両足の指紋がない一族が観察されていますが、実際には肉眼では確認できない微細な溝が存在するとのことです。

指紋はその独自性から、犯罪捜査や個人認証に広く用いられています。日本では、1908年に平沼騏一郎の報告書に基づいて、1911年に警視庁が指紋制度を採用しました。

指紋のパターンには、主に渦状紋、蹄状紋、弓状紋、変体紋の4つがあります。渦状紋は日本人の約50%を占め、その名の通り、円形や渦巻き状の線で構成されています。蹄状紋は、右または左の方向に流れる形状で、日本人の約40%がこのタイプに分類されます。弓状紋は、弓のような形状を持ち、更に単純弓状紋や突起弓状紋に細分されます。そして、変体紋は他のタイプに属さない珍しい形状の指紋を指します。

指紋の研究は過去数世紀にわたって進められてきました。1684年にイギリスの医者ネヘミヤ・グルーが指の溝構造について初めて論文を発表し、続いて多くの研究が続きました。特に1892年にはフランシス・ゴルトンが指紋の詳細な分析モデルを提案し、その後、犯罪捜査において指紋が用いられるようになりました。

指紋の採取方法は様々で、粉末法が一般的に用いられます。この方法では、特定の表面に合わせて異なる性質の粉末を使用し、指紋を可視化します。また、気化したシアノアクリレートを使用することで、非多孔質な表面上に残った指紋を検出することも可能です。

指紋の照合は、特徴点と呼ばれるポイントを用いて行い、最低限12点以上の一致が求められます。近年ではバイオメトリクス技術の進歩により、指紋の認識精度が向上していますが、誤認識の可能性も依然として存在します。

指紋の利用に関する問題も存在し、特に公的機関による指紋採取の人権問題がしばしば指摘されています。日本における入国審査では、指紋採取が義務化され、一方でプライバシーに対する懸念も高まっています。アメリカでは、テロ対策として入国時の指紋採取が義務付けられ、これに対抗措置としてブラジル政府がアメリカ人観光客に指紋採取を求めるなど、外交的な争いも発生しました。

さらに、指紋技術は生体認証の分野でも発展しており、パソコンやスマートフォンのロック解除に利用されています。言うまでもなく、偽造指紋の問題も新たな懸念材料となっています。

このように、指紋は個人与えられた唯一無二の特性であり、文化や技術とも深く結びついています。指紋は犯罪捜査において大きな役割を果たす一方で、個人のプライバシーに関する議論も喚起しています。

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