按針祭海の花火大会

按針祭海の花火大会（あんじんさい うみのはなびたいかい）は、毎年夏に静岡県伊東市の海岸線一帯で開催される、伊東市を代表する大規模な花火大会です。

この花火大会は、伊東市にゆかりの深い歴史的な出来事を記念して行われる「按針祭」の最終日を締めくくるイベントとして位置づけられています。按針祭は、江戸時代初期に徳川家康の外交顧問を務めた英国人、ウィリアム・アダムス、日本名・三浦按針が、伊東の松川河口で日本で初めての本格的な洋式帆船を建造した功績を称える祭りです。そのクライマックスを飾る海の祭典として、多くの観客を魅了しています。

花火大会の最大の特徴は、その規模と演出の多様性にあります。伊豆半島で開催される花火大会の中でも最大級と称され、打ち上げられる花火の総数は圧巻です。特に、フィナーレを飾る一尺五寸玉（直径約45cmの15号玉）は、夜空いっぱいに広がる大輪の花火で観客を圧倒します。また、海岸線約500メートルにわたって展開される空中ナイアガラは、まるで光の滝が降り注ぐかのような幻想的な光景を生み出し、見る人を魅了します。

さらに、日本籍のクルーズ客船としては最大級の「飛鳥II」が、この花火鑑賞のために伊東港に寄港することもあり、海上に浮かぶ豪華客船と夜空の花火が織りなす特別な光景も、この花火大会ならではの魅力の一つとなっています。

観覧場所は多岐にわたり、オレンジビーチを中心に、ホテルサンハトヤや伊東マリンタウン、なぎさ公園、新井堤防など、海岸線沿いのほぼ全域が絶好のビュースポットとなります。特に、なぎさ公園や観光会館前には、ゆったりと花火を観賞できる有料観覧席も設けられています。また、高台に位置するホテル（例えばホテル聚楽やハトヤホテルなど）からも、市街地の夜景と共に花火を眺めることができます。

花火大会の開催に合わせて、有料観覧席近くの松川沿いには多くの夜店が軒を連ね、賑わいを見せます。花火の打ち上げ開始前から終了後まで、多くの人で賑わい、祭り気分を一層盛り上げます。

アクセスについては、公共交通機関を利用する場合、JR伊東線および伊豆急行線の伊東駅から会場まで徒歩約5分と非常に便利です。花火大会の開催時間に合わせて、伊豆急行やJR東日本が臨時列車を運行することもあり、電車でのアクセスをサポートしています。車での来場は、会場周辺の駐車場が限られているため注意が必要です。例年、近隣の小学校校庭などが無料の臨時駐車場として開放されることがあります。ただし、花火大会開催中は、伊東パウエルから新井油正交差点にかけての国道135号線バイパスの一部区間が車両通行止めとなる交通規制が実施されます（概ね19:00から21:30頃）。

伊東市の夏の風物詩として親しまれる按針祭海の花火大会は、その歴史的背景、壮大なスケール、そして多彩な演出で、毎年多くの観客を惹きつけ、伊東の夜空を鮮やかに彩っています。

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