振動発電

振動発電

振動発電とは、振動エネルギーを電力に変換する技術です。具体的には、振動によって生じる圧力を圧電素子などの変換器を用いて電気エネルギーに変換します。

概要

振動発電は、身の回りに存在する様々な振動エネルギーを有効活用できる可能性を秘めています。例えば、人の歩行、自動車の走行、工場の機械の振動、自然界の風や波など、多種多様な振動源が存在します。これらの振動エネルギーを回収し、電力として利用することができれば、持続可能な社会の実現に貢献できると考えられています。

しかし、現状では発電能力が低く、実用的な装置の開発はまだ研究段階です。発電設備の製造に必要なエネルギーを、その後の発電で回収できるかどうかという課題も存在します。

世界各国で研究開発が積極的に行われており、日本国内でも大手企業や大学が様々な取り組みを進めています。例えば、村田製作所や三洋電機（現パナソニック）などの大手企業が展示会で成果を発表したり、金沢大学では大学発ベンチャーを通じて振動発電の商品化を目指す活動が行われています。また、東京大学では日英環境発電ワークショップが開催され、日本とイギリスの研究状況について情報交換が行われました。

海外でも、歩行時の振動を利用したUSB携帯電話充電器や、自動車が通過する際の道路の振動を利用した発電実験などが行われており、実用化が近い製品も存在します。

具体例

振動発電の具体的な応用例を以下に示します。

発電床: 人が歩く際の振動を利用して発電する床材です。圧電素子を敷き詰めた板状の装置で、歩行者の重みで圧電素子が変形し、発電します。LEDを内蔵したタイプもあり、停電時にも光るため、避難経路の確保に役立ちます。
リモコン: ボタンを押す際の振動を電力に変換するリモコンです。電池交換が不要になるため、メンテナンスの手間を省くことができます。NECが開発した振動で作動するリモコンが展示会に出展されました。
雨力発電: 傘に圧電素子の一種であるポリフッ化ビニリデン (PVDF) 膜を組み込み、雨が当たる振動を電力に変換するシステムです。発電した電力でLEDを点灯させることで、夜間の歩行者の安全性を向上させることが期待されています。
橋: 首都高速五色桜大橋では、自動車が通過する際の振動を利用してイルミネーションの電力の一部を発電する実験が行われました。この実験では、圧電素子ではなく、電磁誘導を利用した発電方式が採用されました。
道路: 中日本高速道路（NEXCO中日本）では、道路の振動エネルギーを電気エネルギーに変換するモジュールを開発しており、無線センサーネットワークの電源としての実用化を目指しています。アダマンド並木精密宝石では、道路や駐車場に振動発電デバイスを内蔵した車両検知センサーを設置することで、電池交換や電気配線、通信配線が不要な車両検知システムを開発しています。
その他: オムロンは2012年に振動発電器を搭載したセンサモジュールの有償提供を開始しました。金沢大学では、クリーンルーム内のドアの開閉による振動を利用して発電し、温湿度センサーの送受信モニタリング実験を行っています。

課題と展望

振動発電は、まだ実用化に向けた課題が多く残されています。発電効率の向上、耐久性の向上、コスト削減などが重要な課題です。しかし、環境に優しい発電技術として、その可能性は大きく、今後の研究開発の進展が期待されます。

関連項目

圧電効果
圧電素子
振動
誘電体
圧電アクチュエータ
表面弾性波（SAW）
エネルギーハーベスティング（環境発電）
ナノ発電機

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