圧電素子

圧電素子：圧力と電圧の相互変換を可能にする電子部品

圧電素子とは、圧電効果を利用した受動素子です。圧電効果とは、特定の結晶やセラミック材料に力を加えると電圧が発生し、逆に電圧を加えると変形する現象のことです。この特性を利用して、圧電素子は圧力を電圧に変換したり、電圧を力に変換したりすることができます。

水晶振動子も圧電素子の一種ですが、一般的に圧電素子といえば、水晶よりも安価な材料で作られたものを指すことが多いです。圧電素子は、アクチュエータやセンサとして幅広く利用されているほか、アナログ電子回路における発振回路やフィルタ回路にも用いられています。

圧電素子の種類と構造

圧電素子は、基本的には圧電体を2枚の電極で挟んだ構造をしています。しかし、用途によって様々な構造のバリエーションが存在します。

モノモルフ（ユニモルフ）: 薄い圧電素子と金属板を貼り合わせた構造で、圧電素子の伸び縮みによって反りが生じます。圧電スピーカなどに多く用いられています。
バイモルフ: 2枚の圧電素子を貼り合わせた構造で、比較的大きな変位を得ることができます。2枚の圧電素子に差動的な電圧を加えることで、反りが生じます。カンチレバー構造にすれば、先端の変位を利用して位置決め素子として使用できます。
積層型: 多数の圧電素子を積み重ねて棒状にした構造で、厚み方向の変位を利用します。

これらの構造に加え、用途に応じて電極に振動板などが取り付けられることもあります。一般的に、特定の周波数で振動振幅が最も大きくなるように設計されています。アクチュエータとして説明しましたが、変位から電圧を得るセンサとしても使用可能です。

圧電素子の用途

圧電素子は、様々な電子機器やシステムで活用されています。主な用途としては以下のものが挙げられます。

圧電スピーカ、クリスタル・イヤホン: 電圧を加えることで圧電体を振動させ、音を発生させます。小型で消費電力が少ないため、電子ブザーなどに使われています。周波数特性はあまり良くなく、出力は小さいです。クリスタル・イヤホンは、イヤホンの形状をした圧電スピーカで、かつてはロッシェル塩が使われていました。
振動センサ、マイク: 外部からの振動を電圧に変換して電気信号として検出します。電気楽器のピックアップ、電子ドラム、ゲーム機器など、幅広い用途で用いられています。圧電効果を利用したマイク（クリスタル・マイク）もありますが、インピーダンスが高いため、あまり一般的ではありません。
着火装置: ライターやガス器具など、高圧放電による点火装置に用いられています。ばねなどの機構と組み合わせて、瞬間的に大きな衝撃を与え、放電に必要な電圧を生成します。
発振回路、フィルタ回路: セラミック発振子を用いた発振回路は、安定した発振周波数を生成します。水晶振動子より安定性は劣りますが、ラジオやテレビなどの受信機に多く用いられています。
駆動装置: STMやAFMのプローブ制御、点字ディスプレイ、超音波モーターなど、高精度な駆動装置に用いられています。
圧電振動ジャイロセンサ: 振動の励振と検出を圧電効果で行うジャイロセンサです。
着座、体重センサー（自動車）: エアバッグ展開制御のためのセンシングに使用されます。
ショック・アブソーバー（自動車）: ショックアブソーバーの入力センサとして使用され、操縦安定性の向上に貢献します。
ピエゾ・インジェクター（ディーゼル燃料噴射ノズル・自動車）: コモンレール式ディーゼルエンジンの燃料噴射ノズルに使用され、高圧燃料の精密な噴射を制御します。
* インクジェット・プリンター: インクを押し出して印刷するのに使用されています。

圧電素子は、その小型性、低消費電力性、高精度性などから、今後も様々な分野で活用が期待されています。

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