推奨ブラウザ

推奨ブラウザとは

推奨ブラウザとは、ウェブサイトの運営者が、そのウェブサイトを快適に利用できる環境として推奨する特定のウェブブラウザのことです。ウェブサイトが意図したとおりに表示・動作することを保証するために、特定のブラウザの利用を推奨することがあります。

推奨ブラウザを指定する背景

本来、ウェブブラウザはウェブ標準に準拠していることが期待されます。ウェブ標準に従ってウェブサイトを作成すれば、どのブラウザでも同じように表示されるはずです。しかし実際には、ブラウザのバグや独自仕様によって、ウェブサイトが正しく表示されないことがあります。また、JavaScriptなどの動的な技術は、ブラウザの種類やバージョンによって動作が異なることがあります。

ウェブサイトを作成する側としては、すべてのブラウザで動作確認を行うことは現実的ではありません。そのため、表示や動作を確認した特定のブラウザを推奨ブラウザとして指定することが一般的です。ただし、ウェブ標準に沿って作成すれば、推奨ブラウザ以外でも問題なく利用できる場合が増えています。

ウェブサイトにおける推奨ブラウザの指定方法

推奨ブラウザの指定は、ウェブサイトのトップページやフッター、または専用ページに記載されることが一般的です。推奨ブラウザで検証済みであることや、それ以外のブラウザでは正しく表示されない可能性があることを明示します。また、推奨ブラウザのロゴをバナーとして掲載し、ダウンロードリンクを設定することもあります。アクセシビリティを重視するサイトでは、アクセシビリティポリシーと共に推奨ブラウザを提示することがあります。

推奨ブラウザ以外でアクセスした場合、ブラウザのユーザーエージェントを判別し、専用ページに転送したり、警告メッセージを表示したりする方法もあります。しかし、ユーザーエージェントは偽装が容易であり、また、開発版ブラウザを排除してしまうという問題点もあります。

推奨ブラウザの歴史

推奨ブラウザは、その時代にシェアの高いブラウザや、OSに標準で付属するブラウザから選ばれることが多く、その歴史はブラウザの覇権争い、いわゆるブラウザ戦争の歴史でもあります。

第一次ブラウザ戦争前

初期には、MosaicやNetscapeブラウザが推奨されることが一般的でした。

第一次ブラウザ戦争以降

2000年から2006年頃は、Internet Explorer（IE）を推奨ブラウザとするサイトがほとんどでした。Netscapeも併記されることがありましたが、シェア低下に伴いIE限定のサイトも多く見られました。

第二次ブラウザ戦争以降

2005年頃から、Firefox、Opera、Safari、そしてGoogle Chromeなど、ウェブ標準への準拠を重視したブラウザが登場し、ブラウザ市場は群雄割拠の状態となりました。この結果、ウェブ標準に準拠していれば推奨ブラウザを明記しないサイトも増えました。

NetscapeからFirefoxへ

Netscapeの開発サポートが終了したことで、同じレンダリングエンジンを使用するFirefoxを推奨ブラウザとする動きが加速しました。

IE6・IE7のサポート終了

IE6とIE7は、マイクロソフトによるサポートが終了し、ウェブ標準やHTML5の普及に伴い、多くのサイトがサポート対象から外しました。

IE8、IE9、IE10のサポート終了

その後、IE8、IE9、IE10のサポートも終了し、最新バージョンへのアップデートが推奨されました。

IEのサポート完全終了とMicrosoft Edgeへの移行

2022年6月16日をもってIEのサポートが完全に終了し、Microsoft Edgeへの移行が推奨されています。

バージョンの指定

推奨ブラウザを指定する際は、製品だけでなく、バージョンやパッチの適用状況まで指定することが一般的です。同じ製品でもバージョンによって挙動が異なることがあるためです。また、OSによっても動作が異なることがあるため、OSも併記することがあります。

セキュリティサポートが継続されているバージョンを指定することが基本であり、ベータ版などの開発版は動作保証外とされることが多いです。

現状における問題点と解決方法

推奨ブラウザに関する問題点として、セキュリティサポートが終了したブラウザを推奨しているケースがあります。これは、ユーザーがセキュリティ上のリスクを抱えることになるため、問題があります。運営者は、問題のあるブラウザを推奨から外し、他のブラウザへの乗り換えを促すべきです。

また、ブラウザのバージョンアップによって仕様が変わることもあります。そのため、推奨ブラウザの更新には、動作検証が必要となります。

ウェブサイト運営者ができる工夫として、バナー画像の入れ替えや、最新版へのアップデート、別のブラウザへの乗り換えを促すといった方法があります。また、ブラウザの自動アップデート機能の利用を推奨することも効果的です。

バージョン指定表記の悪い例

バージョン表記があいまいな例としては、製品名のみを記載する場合や、特定のバージョンのみに限定してしまう場合などがあります。また、バージョンの範囲指定が曖昧で、脆弱性が修正された新バージョンへの更新を阻害する可能性もあります。

バージョン指定表記例

対応するバージョン範囲を明確に記載することが重要です。例えば、「〇〇 8.45以降」のように、バージョンと「以降」という言葉を組み合わせて、範囲を明確に示す必要があります。また、テストバージョンは除外することを明記すると良いでしょう。

ウェブブラウザを限定することによる問題

推奨ブラウザを限定することは、ウェブサイトの制作コストを抑えることができる一方、他のブラウザのユーザーにとっては不便となることがあります。特定のブラウザでしか利用できない技術（ActiveXなど）を使っている場合、他のブラウザではコンテンツを閲覧することができません。また、アクセシビリティの観点からも、特定のブラウザに特化したサイトは望ましくありません。

推奨ブラウザを限定することによって、以下のような問題が発生します。

代替手段の確保が困難になる
推奨ブラウザが動作しないOSのユーザーを切り捨てることになる
* アクセシビリティ上の問題

これらの問題を解決するためには、できるだけ特定のブラウザに依存しない技術を利用し、アクセシビリティに配慮したサイト作りを心がける必要があります。

閲覧者側での対処方法

ウェブサイトによっては、推奨ブラウザ以外でも問題なく閲覧できることがあります。しかし、特定のブラウザでしか閲覧できない場合もあります。その場合、通常は推奨ブラウザで閲覧することになります。閲覧者側ができることは、ウェブサイト運営者に要望を伝えることですが、すぐに改善されるとは限りません。また、不当な要求は、業務妨害とみなされる可能性もありますので、注意が必要です。

現状

現在のウェブサイトは、HTML5の規格に準拠することが求められています。この要求に応えられるのはChromium系ブラウザであるため、現在の推奨ブラウザはChromium系ブラウザを指すことが多くなっています。しかし、Chromium系の水準を上回るブラウザが現れれば、推奨ブラウザの定義も変わるでしょう。

まとめ

推奨ブラウザは、ウェブサイトを快適に利用するための重要な要素です。ウェブサイト運営者は、ユーザーの利用環境を考慮し、適切なブラウザを推奨する必要があります。また、ユーザー側も、ウェブサイトの推奨環境を確認し、セキュリティやアクセシビリティにも配慮しながら利用することが大切です。

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