携帯式防空ミサイルシステム

携帯式防空ミサイルシステム (MANPADS)

携帯式防空ミサイルシステム（MANPADS）は、個人が携行できる地対空ミサイルの一種で、通常は肩に担いで発射されます。この兵器は、主に低空で飛行する航空機やヘリコプターを攻撃するために利用される誘導兵器です。特にその汎用性と携帯性から、非正規軍、テロリストなどによる使用が懸念されています。

歴史的背景と開発

MANPADSの起源は1940年代に遡り、地上部隊を航空機から保護する目的で開発されたフリーガーファウストに見られます。現代では、この種のミサイルは民間航空機を標的にしたテロ攻撃に利用される可能性が高いため、各国政府はその所持と取引に対して厳格な規制を設けています。

アメリカをはじめとした25カ国で生産されており、その設計はかなり多様です。一般的には全長150〜180cm、重量16〜18kg程度で、探知距離が約10km、交戦可能距離は6kmほどとなっています。このため、航空機は高度6100m以上を飛行すれば、MANPADSの脅威から逃れることができます。

ミサイルの種類

1. 無誘導ミサイル

1944年にナチス・ドイツが開発した無誘導型のフリーガーファウストが初期の例です。この兵器は対戦車用でしたが、その後、冷戦期に入ると、赤外線を使用した誘導ミサイルへと進化していきました。

2. 赤外線誘導ミサイル

赤外線誘導型は、航空機の熱源を追尾し、主にジェットエンジンの排気をターゲットにしています。この方式により、先に発射されたミサイルが問題なく目標に命中します。特に第一世代から第四世代にかけて、近代的な赤外線の技術が導入され、精度が向上しています。

3. CLOS（指令照準線一致）誘導

CLOSでは操縦手が肉眼で標的を追い続けることにより、誘導を行います。この方式には訓練が必要であるため、操作が難しい側面がありますが、赤外線妨害に対する耐性が高いのが利点です。

4. レーザー誘導

レーザーを使用して目標に向かせるミサイルも存在します。スウェーデンのRBS 70やイギリスのスターストリークがその例です。これらは非常に精度が高く、操作手がレーザーの目標に標的を当て続ける必要があります。

有名な使用例

MANPADSは過去数十年にわたり、武力紛争の中で様々な使用例がありました。特にベトナム戦争や湾岸戦争、近年ではシリア内戦やロシアのウクライナ侵攻での暗い歴史が刻まれています。また、民間機への攻撃例もあり、エア・ローデシア825便の撃墜が初の事例とされています。

対策と課題

MANPADSの拡散が懸念される中、国際的にはその管理と取り扱いについての合意が求められています。特にテロリストや非正規組織への流出が問題視されており、アメリカを中心に多くの取り組みが進められていますが、数十万基を超えるミサイルが未だに武装勢力の手にあるとの報告もあります。

これらを受けて、航空機には様々な防護システムが導入されています。特に対空ミサイルからの防御を目的とした飛行機用の妨害装置は開発が進められています。

結論

携帯式防空ミサイルシステム（MANPADS）は高い威力を持つ一方で、その普及がもたらすリスクは無視できないものです。今後の取り組みが、その拡散防止や脅威に対する対策において重要な役割を果たすことが期待されます。

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