摂播五泊

摂播五泊：古代瀬戸内海の交通を支えた五つの港

奈良時代、聖武天皇の時代に活躍した高僧、行基。その名は数々の寺社建立や社会事業への貢献を通じて広く知られていますが、実は、海上交通の整備にも深く関わっていたと言われています。その代表的な事業の一つが、播磨と摂津の二国にまたがる五つの港、通称「摂播五泊（せっぱんごはく）」の開港です。

摂播五泊は、現在の兵庫県内に位置する以下の五つの港を指します。それぞれが独自の地理的条件を生かし、古代の海上交通において重要な役割を担っていました。

室生泊（むろうどまり）： たつの市御津町に所在。穏やかな湾を持つ自然の良港として、交易や人々の往来に利用されたと考えられています。周辺地域は古くから豊かな漁場であり、水産物の集散地としての機能も果たしていた可能性があります。港の規模や具体的な構造については、現時点では多くの謎が残されていますが、発掘調査などを通じて、その全貌が明らかになることが期待されています。

韓泊（からとまり）/福泊（ふくどまり）： 姫路市的形町に所在。文献によっては「韓泊」と「福泊」の二つの名称が用いられており、両者が同一の港を指すのか、あるいは近接した場所に存在した別々の港であったのか、詳細は不明です。いずれにしても、播磨地方の中心地である姫路近郊に位置していたことから、重要な交易拠点として機能していたと考えられます。当時の港の様子を想像する手がかりとなる遺構や記録の発掘、発見が待たれています。

魚住泊（うおずみどまり）： 明石市大久保町に所在。明石海峡に面した立地から、瀬戸内海と大阪湾を結ぶ重要な中継地点としての役割を果たしていたと考えられています。特に、畿内と山陽地方を結ぶ海上交通において、重要な役割を担っていた可能性があり、物流の中心地としての繁栄が想像されます。

大輪田泊（おおわだどまり）： 神戸市兵庫区に所在。古くから神戸港として栄えたこの地は、摂播五泊の中でも特に規模が大きく、重要な港湾施設として機能していたと考えられています。畿内への物資輸送や、海外との交易においても重要な役割を果たし、当時の国際交流の一端を担っていた可能性も示唆されています。

* 河尻泊（かしりどまり）： 尼崎市神崎町に所在。淀川河口部に位置することから、河川交通と海運の接点として機能していたと考えられます。内陸部への物資供給や、畿内各地との連携において重要な役割を果たし、陸路と海路を結ぶ交通の要衝であったと考えられます。

これらの港は、それぞれ独自の地理的特徴と歴史的役割を有しており、古代における瀬戸内海の海上交通網を支える重要な拠点として機能していました。摂播五泊の整備は、当時の政治・経済・文化の発展に大きく貢献したと考えられ、その歴史的意義は非常に大きいと言えるでしょう。しかしながら、これらの港に関する史料は必ずしも十分ではなく、今後の研究によってさらに多くの事実が解明されることが期待されます。発掘調査や文献研究を通じた更なる研究が、古代瀬戸内海の活気と摂播五泊の真の姿を明らかにするでしょう。

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