擬似的超新星

擬似的超新星

擬似的超新星（supernova impostor）とは、スペクトル解析においてIIn型超新星と似通った特徴を示すものの、本物の超新星爆発とは根本的に異なる分類とされる天文現象です。これは恒星がその一生の最後に迎える破滅的な終焉ではなく、星の表面層での大規模な爆発現象と考えられています。

特徴

この現象の主な特徴は、超新星と比較して放出されるエネルギーが大幅に低いことです。その規模は超新星の約1%程度に過ぎないと見積もられています。見かけの明るさを示す絶対等級でも、通常-10等から-14等程度と、一般的な超新星より約5等級暗くなります。また、放出される物質の膨張速度も遅く、秒速1000キロメートルから4000キロメートル程度です。スペクトル線は狭く観測され、これも膨張速度が遅いことを示唆しています。ただし、新星と比べれば遥かに強力な爆発であり、その規模は中間に位置すると言えます。過去にIIn型超新星と分類された天体の中には、この擬似的超新星である可能性を秘めた暗い事例が含まれていると考えられています。

正体

現在の天文学では、擬似的超新星は非常に明るく巨大な恒星である高光度青色変光星（LBV）で発生すると考えられています。LBVは太陽質量の100倍を超えるような極めて重い星で、強い放射圧により外層の物質を宇宙空間に放出する活動を常に行っています。この質量放出が一時的に非常に激しい爆発的な様相を呈した際に、擬似的超新星として観測されると考えられています。

星の生存と観測例

擬似的超新星の決定的な特徴は、多くの場合、爆発を経ても中心となる恒星が消滅せず残存することです。これは、恒星全体が破壊される超新星爆発とは明確に異なります。実際に、SN 1954J、SN 1961V、SN 1997bsといった候補天体では、爆発から数年後に元の星が存在することが確認されています。爆発直後は、放出された大量の物質によって中心星が隠されてしまうため、観測には時間を要します。りゅうこつ座η星は、中心星が自身が過去に放出したガスや塵の層に幾重にも覆われている代表的な例です。

りゅうこつ座η星は、おそらく最も有名かつ初期の観測例です。1841年から1843年にかけての大増光時、この星はマイナス0.8等級に達し、当時地球から非常に近いシリウスに次ぐ明るさとなりました。約7500光年も離れている星がこれほどの明るさになったことは、爆発が通常の変光現象とは比較にならないほど巨大であったことを示しています。

その他

擬似的超新星を起こす恒星は、進化の過程で水素やヘリウムといった外層を失っている場合があります。SN 2006jcの事例は興味深く、この星は2004年に増光（擬似的超新星の候補）を見せた後、2006年にIIn型超新星として爆発しました。これは、このような爆発が、星の最期の段階で起こりうることを示唆しています。

擬似的超新星またはその候補

りゅうこつ座η星 (Eta Carinae)
はくちょう座P星 (P Cygni)
SN 1954J
SN 1961V
SN 1997bs
SN 2000ch
SN 2002kg
SN 2005gl
SN 2008S
SN 2010dn

関連項目

超新星
高光度青色変光星
* SN 2006jc

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