改良型CANDU炉

改良型[CANDU炉]の概要

改良型[CANDU炉]は、カナダ原子力公社が開発を進めていた次世代原子炉です。CANDU炉をベースに、軽水冷却炉と加圧水型軽水炉の技術を融合した、重水減速沸騰軽水冷却炉に類似した設計が特徴です。ACR-1000と呼ばれるモデルでは、約1200MWeの発電能力を有していました。

ACRは、低濃縮ウラン燃料、軽水冷却材、重水減速材を使用し、反応度制御材や安全装置を低圧の減速材の中に配置することで、高い安全性を実現しています。CANDU炉から受け継いだ特徴として、CANFLEX燃料の使用による運転中の燃料交換、長い即発中性子の寿命、長期運転における反応度低下が少ないことなどが挙げられます。

さらに、従来のCANDU炉と比べて炉心サイズが半分で済むコンパクト設計となっており、燃料集合体には43エレメントのCANFLEX-ACRを採用。中心部に中性子吸収体を配置することで、反応度のボイド係数を負の値に制御し、燃焼度向上を実現しています。

経済性についても、ACR-1000はCANDU-9の低価格版として位置づけられていました。CANDU-9よりも若干大型化しますが、建設費と運転費の削減が見込まれていました。天然ウランは使用できませんでしたが、濃縮ウランの使用コストは低いとされ、大きな問題とはみなされていませんでした。

開発の経緯と商業化の失敗

カナダ原子力公社は、世界中の新規原子力発電プロジェクトにACR-1000を提案しましたが、いずれも受注には至りませんでした。最後の提案となったのは、ダーリントン原子力発電所への2基増設プロジェクトでしたが、予想入札額の3倍という高額な見積もりにより、2009年にプロジェクトはキャンセルされました。

受注の見込みがなくなったことから、カナダ原子力公社の原子炉部門はSNCラバリンに売却され、ACRの開発は事実上終了しました。様々な改良や安全対策が施されたにもかかわらず、商業化に成功しなかった背景には、国際競争の激化や、他の原子炉技術との競争に敗れたことなどが考えられます。

ACR-1000の安全性

ACR-1000は、複数の高度な安全システムを備えていました。その多くはCANDU-6型炉のシステムを改良発展させたものです。

安全停止システム

ACR-1000は、2系統の独立した安全停止システム(SDS)を備えています。SDS1は中性子吸収体を、SDS2は硝酸ガドリニウム溶液を、それぞれ使用して原子炉を迅速に停止させることができます。どちらのシステムも、3系統の制御回路のうち2系統が作動することで作動し、2秒以内に原子炉の熱出力を90%低下させることができます。

その他の安全システム

冷却材喪失事故(LOCA)発生時の冷却水を供給する予備水システム(RWS)、各種安全機能作動のための非常用電源供給システム(EPS)、安全機能関連設備に軽水を供給する冷却水システム(CWS)など、多重防御システムを備えていました。

運用と展望

ACRは93%以上の設備利用率を目指しており、3年に1回の21日間計画停止と年間1.5%の停止期間を想定していました。炉心の分割設計により、オンライン保守やオフライン管理が柔軟に対応可能で、保守コスト削減にも貢献する設計でした。

しかし、アルバータ・エナジー(後にブルース・パワーに買収)による西部カナダへの導入計画や、ニューブランズウィック州ポイント・ルプロー原子力発電所への導入検討なども頓挫しました。イギリス原子力規制局への設計審査申請も取り下げられています。

ACR-1000は、オンタリオ州のダーリントン原子力発電所増設プロジェクトにも提案されましたが、高額な入札価格により、プロジェクトは中止されました。結果的に、ACRは商業化に失敗し、カナダ原子力公社の原子炉部門はSNCラバリンに売却されました。その後、SNCラバリンは中国核工業集団と協力関係を築き、既存のCANDU炉の設計・販売を行うようになりました。

関連事項

CANDU炉
その他の第3世代原子炉 (EPR, AP1000, ESBWR, ABWR, US-APWRなど)

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