放射性同位元素等の規制に関する法律

放射性同位元素等の規制に関する法律について

放射性同位元素等の規制に関する法律（以下、本法）は、放射線障害を防止し、公共の安全を確保することを目的とした日本の法律です。この法律は、放射性同位元素の使用、販売、賃貸、廃棄といった取り扱いから、放射線発生装置の使用、放射性同位元素によって汚染された物の廃棄まで、幅広い範囲を規制対象としています。

法律の変遷

本法は、制定当初、「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」という名称でしたが、2019年9月1日に現在の「放射性同位元素等の規制に関する法律」に改題されました。この改正は、原子力利用における安全対策の強化を目的としたものでした。

所管と連携

本法は、環境省の外局である原子力規制委員会が所管しており、実務は原子力規制庁長官官房放射線防護企画課が担当しています。また、環境本省の環境再生・資源循環局放射線物質汚染廃棄物対策室や、経済産業省資源エネルギー庁鉱物資源課など、関係する他の省庁とも連携して法律の執行にあたっています。

定義

本法における主な定義は以下の通りです。

放射線

原子力基本法に規定される放射線であり、具体的にはα線、β線、γ線、中性子線、陽子線などの重荷電粒子線、軌道電子捕獲による特性X線、1MeV以上のエネルギーを持つ電子線およびX線を指します。

放射性同位元素

放射線を放出する同位元素を含む物質で、科学技術庁告示で定められた量と濃度を超えるものを指します。ただし、核燃料物質、医薬品、医療機器に組み込まれたものは、それぞれ別の法律で規制されるため除外されます。

放射線発生装置

サイクロトロンやシンクロトロンなど、荷電粒子を加速して放射線を発生させる装置を指します。ただし、一定の線量当量率以下のものは除外されます。

基本構造

本法の規制体系は、国際放射線防護委員会（ICRP）の勧告を取り入れて構成されています。

販売・賃貸

放射性同位元素を直接扱わない販売や賃貸は、届出制となっています。

使用・廃棄

放射性同位元素の使用や廃棄は、取り扱う量に応じて届出または許可が必要です。

施設基準

放射性同位元素の使用、貯蔵、廃棄に関する施設は、所定の技術基準に適合している必要があり、定期的な点検や補修が義務付けられています。

管理体制

事業所ごとに放射線障害予防規程を定め、管理区域や事業所境界での線量を定期的に確認する必要があります。

被曝管理

管理区域に立ち入る作業従事者に対しては、定期的な被曝線量測定と健康診断の実施、記録の永久保管が義務付けられています。また、定期的な教育訓練も必要です。

譲渡・譲受

放射性同位元素の譲渡や譲受は、使用や廃棄が許可または届出済みの相手との間でのみ可能です。また、その記録が義務付けられています。

運搬

放射性同位元素の運搬は、所定の技術基準に従って行う必要があります。

放射線取扱主任者

事業所ごとに放射線取扱主任者を選任し、上記の管理監督を行わせる必要があります。病院の場合は医師が担当することも可能です。

使用許可基準

放射性同位元素の使用許可を得るためには、原子力規制委員会規則で定められた技術基準に適合している必要があり、放射線障害のおそれがないことが基準として挙げられています。

放射線業務従事者の線量限度

本法では、放射線業務従事者の被曝線量限度が定められています。

関連資格

本法に関連する資格として、放射線取扱主任者があります。

参考情報

より詳しい情報は、以下の資料をご参照ください。

広瀬研吉『わかりやすい原子力規制関係の法令の手引き』
草間朋子編『ICRP90年勧告、その要点と考え方』
(社)日本アイソトープ協会『研究分野における放射性廃棄物の取扱い』
原子力百科事典ATOMIKAの関連情報

本法は、放射線から人々の健康と安全を守るために重要な役割を果たしています。事業者は、本法を遵守し、安全な放射性同位元素等の取り扱いを徹底することが求められます。

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