放射計

放射計（ほうしゃけい、Radiometer）とは

放射計は、電磁波が放射するエネルギー、すなわち放射電力を測定するために設計された機器の総称です。英語ではRadiometerと呼ばれ、日本語では「ラジオメーター」という呼称も広く使われています。

電磁波は、光や熱、電波など、さまざまな形で私たちの周囲に存在し、エネルギーを運んでいます。放射計は、この電磁波が放出するエネルギー量を正確に捉え、数値として表現することを目的としています。この技術は、気象観測、地球環境モニタリング、産業分野での温度管理、さらには宇宙からの観測など、多岐にわたる分野で不可欠なものとなっています。

測定対象と種類

放射計は、原理的にはあらゆる周波数領域の電磁波測定に適用可能ですが、一般的に「放射計」という言葉が使われる際には、特に赤外線領域の電磁波放射を測定する装置を指すことが多いです。赤外線は、物体から放出される熱放射として知られており、非接触での温度測定などに広く利用されます。

しかし、放射計の概念は赤外線に限定されるものではありません。測定対象とする電磁波の周波数帯に応じて、様々な種類の放射計が存在します。代表的なものとしては、以下の二つが挙げられます。

1. 赤外線放射計
主に赤外線領域（0.75マイクロメートルから1000マイクロメートル程度）の電磁波放射を測定します。地球表面や雲の温度、大気中の水蒸気量などを観測する人工衛星や、産業分野での温度分布計測などに用いられます。
2. マイクロ波放射計
マイクロ波領域（約1ミリメートルから1メートル）の電磁波放射を測定します。大気や地表面からのマイクロ波放射は、水蒸気や液体水、雪氷、土壌水分などの情報を含んでいるため、気象予報や地球環境研究において重要な役割を果たします。

その他にも、可視光や紫外線領域など、特定の波長帯に特化した放射計が存在します。

測定原理

放射計の測定原理は、その種類や設計によって異なりますが、特に赤外線放射計でよく用いられる検出方式の一つにボロメータ型があります。

ボロメータは、電磁波を吸収すると温度が上昇する性質を持つ感温素子を利用した検出器です。入射した赤外線エネルギーがこの素子に吸収されることで、素子の温度がわずかに上昇します。この温度変化を、抵抗値の変化などを捉える高感度な温度計（例えばサーミスタや熱電対など）によって測定します。

重要なのは、感温素子の温度上昇量が、入射した電磁波の放射電力量に比例するという物理的な関係です。したがって、温度計で測定された温度の上昇量を把握することで、間接的に、しかし高精度に、測定対象から放射される電磁波のエネルギー量を定量的に知ることができるのです。

ボロメータ型検出器は、感度が高く広い波長範囲に対応できるため、様々な赤外線放射計に採用されています。ただし、その応答速度や測定精度は、素子の熱容量や熱伝導率、温度計の性能など、複数の要因に依存します。

マイクロ波放射計など、他の周波数帯の放射計では、また異なる検出原理が用いられることが一般的です。例えば、高周波信号を直接増幅して電力値を測定する方式などがあります。

関連する概念

放射計に関連する用語として、「放射収支計」や「ラジオメーター効果」などがあります。

放射収支計：特定の面（例えば地面や大気層の境界面）に入射する太陽放射、地表面からの赤外線放射、大気からの下向き赤外線放射などを全て測定し、その収支（吸収、反射、透過、放射の差引き）を明らかにするための複合的な測定装置です。複数の放射計や日射計などを組み合わせて構成されます。
ラジオメーター効果：低圧の気体中で、光を吸収して温度が上昇した羽根板が回転する現象を指します。これは放射圧によるものではなく、気体分子が加熱された面と冷たい面で異なる運動量交換を行うことで生じるものであり、放射計の測定原理とは異なりますが、「ラジオメーター」という名称が共通するため混同されることがあります。

放射計は、このように多様な原理と種類を持ち、私たちの世界を電磁波のエネルギーという視点から理解するための重要なツールとして、科学技術の発展に貢献し続けています。

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