教会派

教会派（日本基督教団）

日本基督教団内に存在する思想的・実践的な立場の一つを「教会派」と呼びます。この潮流は、キリスト教会の使命や活動の優先順位に関して、特定の理解を持っています。しばしば「社会派」と呼ばれる別の潮流との対比の中で論じられることが多い言葉です。

定義と基本的な立場

教会派の基本的な考え方は、キリスト教会の主要な役割を福音宣教、すなわち人々に救い主イエス・キリストの福音を伝えることにあると捉える点にあります。彼らは、キリストの十字架と復活が示す神の愛が、人間の罪からの救いを可能にしたという真理を、言葉だけでなく、生活や態度を通して人々に伝えていく「伝道」を教会の最も重要な使命と位置づけています。そのため、社会構造の変革を目指す政治的・社会的な運動よりも、この伝道活動を優先すべきだと考えます。教会が積極的に社会に出て行き、福音を宣べ伝えることがその本質的な働きであると認識する人々や教会が、教会派に分類されます。

社会派との対立の歴史

「教会派」という言葉が広く使われるようになった背景には、日本基督教団内部での社会派との間の様々な意見の対立があります。特に象徴的な出来事として、1970年に開催された日本万国博覧会（大阪万博）におけるキリスト教館の出展を巡る対立が挙げられます。社会派が、万博への参加を世俗的なイベントや国家権力との結びつきとして批判し反対の姿勢を示したのに対し、教会派はこれを福音宣教のための貴重な機会と捉え、出展を推進しました。この論争は、教会が社会の出来事や文化とどのように関わるべきかという、教団内の根本的な課題を浮き彫りにしました。

東京神学大学での出来事

万博を巡る対立は、日本基督教団の指導者育成を担う東京神学大学にも深刻な影響を与えました。万博出展に反対する学生たちは全学共闘会議を結成し、抗議活動を展開しました。これに対し、万博推進の立場であった教員（教授会）は、大学構内に警察機動隊を導入し、学生を排除するという事態に至りました。この出来事は、教会派と社会派の対立が、教団の教育機関内部にまで深く根差していたことを示すものです。

「伝道派」「教憲・教規派」としての側面

教会派は、その伝道重視の姿勢から、社会派から「教会勢力の拡大を目指すもの」と批判されることもありました。これに対して、教会派自身は自らの立場を強調する意味で「伝道派」と呼ぶこともあります。これは、彼らが教会の本質的な働きとして福音宣教を何よりも優先していることを強く意識しているためです。

また、教会派は「教憲・教規派」と呼ばれることもあります。これは、彼らが日本基督教団の教憲（根本規則）と教規（細則）を非常に重んじる姿勢を示す別称です。具体的な事例としては、教団の定める規則によらない聖餐式（フリー聖餐）を行った特定の牧師に対して、教憲・教規に反する行為として戒規（懲戒処分）を求めたことが挙げられます。山北宣久氏や藤掛順一氏といった教会派の代表的な人物が、この教憲・教規を重視する立場から教団内で発言しています。

主な関連団体・人物

教会派の立場を代表する団体や牧師として、以下のような名前が挙げられます。

東京神学大学（特に万博問題時の教授会など）
日本基督教団福音主義教会連合
山北宣久
藤掛順一

このように、教会派は福音伝道を教会の第一の使命とし、教団の規則を重んじる立場として、日本基督教団内の議論において重要な役割を果たしています。

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