教育公務員特例法

教育公務員特例法

教育公務員特例法（きょういくこうむいんとくれいほう）は、日本の法律の一つであり、正式には「教育公務員特例法（昭和24年1月12日法律第1号）」と称されます。

制定の背景と目的

この法律は、1949年（昭和24年）に制定されました。教育に携わる公務員、すなわち教育公務員は、単に行政事務を執行するだけでなく、国民教育を通じて社会全体の発展に寄与するという、公共サービスの中でも特に重要な役割を担っています。彼らの職務は、児童・生徒・学生の教育、学術研究の推進、社会教育の振興など多岐にわたり、その専門性や独立性、そして教育という営みそのものが持つ特殊性から、一般の公務員とは異なる人事管理上の配慮が必要であると考えられました。

教育公務員特例法は、こうした教育公務員の職務の特殊性と、それに伴う責任の重さを踏まえ、彼らの採用・異動・評価、給与、能力不足や規律違反への対応、日々の職務遂行上の義務、そして専門性の向上を図るための研修など、人事管理に関する基本的な事項について、国家公務員法や地方公務員法に対する特例を定めたものです。これにより、教育公務員がその使命を十全に果たせるような環境整備を目指しています。

対象者

この法律が対象とする教育公務員は、主に以下の者を指します。

国立、公立の大学の学長、教員（教授、准教授、講師、助教、助手など）及び部局長
公立の小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、幼稚園等の校長及び教員（教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、講師など）
教育委員会等の専門的教育職員（指導主事、社会教育主事など）

これらの職務に就く者は、その身分が一般の公務員でありつつも、本特例法の適用を受けることになります。

法律の主な構成と内容

教育公務員特例法は、以下の章立てで構成され、教育公務員の人事管理に関わる広範な規定を含んでいます。

第一章 総則: 法律の目的や、教育公務員の定義などが定められています。
第二章 任免、人事評価、給与、分限及び懲戒:
第一節 大学の学長、教員及び部局長: 大学という高等教育機関の特性に合わせた人事制度（例：教員の任期制など）に関する特例が規定されています。
第二節 大学以外の公立学校の校長及び教員: 初等中等教育機関における校長や教員の人事管理に関する規定です。
第三節 専門的教育職員: 教育委員会などで専門的な教育行政や指導に携わる職員に関する規定です。
これらの節において、採用、配置換え、昇任、評価、報酬体系、休職や免職といった分限処分、懲戒処分に関する特例が定められています。
第三章 服務: 教育公務員が遵守すべき職務遂行上の義務や規律が定められています。一般の公務員に課せられる服務規程に加え、教育の機会均等、教育の中立性、政治的活動の制限など、教育に携わる者としての特別な責任と関連する規定が含まれます。
第四章 研修: 教育公務員には、その専門的知識・技能を高め、資質の向上を図るための研修を受ける義務と権利があることが定められています。現職研修や、長期にわたる研修に関する規定があります。
第五章 大学院修学休業: 教育公務員が大学院で修学するための休業制度に関する特例規定です。専門性の向上を図る重要な手段の一つと位置づけられています。
第六章 職員団体: 教育公務員が結成する職員団体に関する規定です。
* 第七章 教育公務員に準ずる者に関する特例: この法律の一部または全部が適用される、教育公務員に準ずる立場の者に関する規定です。

意義と関連法規

教育公務員特例法は、教育現場における安定した人材確保と、教育の質の維持・向上を図る上で極めて重要な法律です。教育公務員の独立性や自律性を尊重しつつ、全体の奉仕者としての規律を保つためのバランスを定めています。

関連する法律としては、教育公務員を含む全ての公務員に適用される国家公務員法や地方公務員法、日本の教育制度の根幹を定める教育基本法や学校教育法といった教育二法、そして公立学校の設置・管理や教職員の人事に関わる地方教育行政の組織及び運営に関する法律（教育委員会法）などがあります。

教育公務員特例法は、これらの法律と連携しながら、教育公務員という専門職集団に特化した人事制度を運用するための法的基盤を提供しています。

（参考: e-Gov法令検索にて最新の条文を参照可能）

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