数書九章

『数書九章』の概要と構成

『数書九章』は、南宋時代の数学者秦九韶によって1247年に著された重要な数学書です。全18巻から成り、実用的な計算問題を扱っています。この書は、古代中国の数学の集大成ともいえるもので、数学的知識を深めるための貴重な資料とされています。

構成について

本書は、主に9つのカテゴリー（章）に分類されており、各カテゴリーは2巻から構成されています。それぞれの章には9つの問題が含まれており、合計で81問の計算問題を提供しています。具体的には、以下の9つの章があります。

1. 大衍類：大衍求一術の概念を探求しています。
2. 天時類：天文学や気象学に関連する計算を扱っています。
3. 田城類：土地面積の計算方法に焦点を当てています。
4. 測望類：幾何学と測量に関する計算技術を紹介しています。
5. 賦役類：租税や賦役に関する計算を行います。
6. 銭穀類：食料の徴収や倉庫管理に関する実務的な計算を含みます。
7. 営建類：土木建築に関連する多様な計算問題を提示しています。
8. 軍旅類：軍の配備や物資の供給に関する計算を扱います。
9. 市物類：商取引や利息に関する計算を紹介しています。

このように、多岐にわたる実用的な知識が編纂されています。

問題の特性

各問題には、その解答や計算手法、具体的な計算式が示されています。これにより、読者は実際に問題を解くことが容易になるよう配慮されています。特に、算木（算盤）を用いることで、比較的簡単に解決できる形式に設定されています。

さらに、問題自体に含まれるデータが非常に豊富で、そこから導き出される答えも多岐にわたります。例えば、営建類の「計定築城」では、88の異なるデータを基にして多様な解答が得られ、賦役類の「復邑修賦」では、合計180箇所の答えが導かれるという具合です。このように、実践的な数学的手法が展開されています。

研究の意義

『数書九章』では、剰余方程式である大衍求一術や、雨量観測法などにも触れています。また、当時不明だった過去の暦法の計算方法を詳細に示すなど、非常に優れた研究が残されています。しかし、暫くの間はその存在が忘れ去られていたため、中国や日本における影響は小さかったとされています。その再評価は清代になってから始まりました。

参考文献

本書についてより深く理解するための参考文献も多く存在します。以下にいくつかの文献を挙げておきます。

• - 今井溱「数書九章」 （『アジア歴史事典 5』（平凡社、1984年））
• - 李迪 著／大竹茂雄・陸人瑞 訳『中国の数学通史』（森北出版、2002年）ISBN 978-4-627-01941-6
• - 銭宝 編／川原秀城 訳『中国数学史』（みすず書房、1990年）ISBN 978-4-622-04083-5

このように、『数書九章』はその時代を超える価値を持った数学書であり、古代中国の数学的思考を知る上で欠かせない資料となっています。

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