敵討禁止令

敵討禁止令について

敵討禁止令（かたきうちきんしれい）とは、1873年の2月7日に発布された日本の法令です。この法令は、仇討（あだうち）や復讐（ふくしゅう）を禁止し、法治国家の原則を強調する重要な意味を持ちます。所謂「敵討禁止令」とは、明治新政府が法律に基づく秩序の構築を目指した結果として現れたものです。

背景

明治元年（1868年）、新政府は「仮刑律」を制定しました。このとき、従来の慣習が一部残る形で敵討が公認されていました。しかしながら、仮刑律はあくまでも暫定的なものであり、将来的な改正が見込まれていました。

その後、刑法官判事試補の鈴木唯一が、武士が行う無礼討に着目し、私刑を禁止するよう提言しました。この意見がきっかけとなり、敵討も議論に取り上げられるようになりました。政府内では、法律を重視する考えが広まり、敵討の合法性について審議が続きました。

敵討禁止令の発布

この議論の結果、1873年2月7日に、司法卿である江藤新平の強い主導によって敵討禁止令が太政官布告第37号として発布されました。興味深いのは、江藤がこの布告を行った14日前に、司法省予算削減に対する抗議のため辞表を提出していたことです。この背景から、法令の発布がどれほど重要であったかがうかがえます。

敵討禁止令により、近親者が被害を受けた場合には、被害者自身が武力を用いるのではなく、できるだけ早く司法官憲に訴えることが義務付けられることとなりました。これにより、国家が法律に基づいて加害者を処罰することが明確に定められ、私的な復讐行為を排除する意義が強調されました。

法制度の変化

敵討に関する規定は、1880年（明治13年）に新しい刑法が公布される際に完全に法典から除去されました。このことで、日本は自力救済や私的復讐の概念から一歩進み、法による正義を優先する国家へと変貌を遂げたのです。敵討禁止令は、法治の必要性を認識し、新たな時代の幕開けを象徴する法令として位置付けられています。

終わりに

今日の日本においても、敵討禁止令とその背後にある法治の概念は重要な根底を成しています。個人が不正に対して復讐することが許されないことは、社会の秩序を保つために欠かせない考え方です。法的な手続きに従って解決を図ることで、公正な社会を維持することが可能となっています。敵討禁止令は、そんな法治国家の確立に向けた一歩として今なお評価され続けているのです。

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